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最初はなにかの間違いかと思った。
陽莉がやけに俺の方を凝視してくる。


「な、なーに?
陽莉ねえちゃん」


顔を引きつらせつつ聞いてみた。
この変な呼び方もまだ慣れない。
しいていえば兄は俺の方なのに妹を姉ちゃん、だなんて呼ぶのには抵抗がある。
今日は陽莉が探偵事務所に遊びにきていて着いたとたんから江戸川コナンに対する視線が痛い。
(おっちゃんは麻雀で蘭は買い物に行ってる)
蘭がでかけてる間二人で留守番を頼まれたわけだ。


「んーん
なんでもないよ!」


「あははー
変なのー」
(なんなんだ、陽莉のやつ・・・!)


最初はにこにこ笑ってそう言ってた陽莉の顔つきはだんだんと真剣なものになっていった。


「もういいよ、お兄ちゃん
そんな下手な芝居しなくても」


「・・な、なに言ってるの?
変な陽莉ねえちゃ、「そんな風に呼ばないで!」」


大声をだしたせいかコナンは驚いた顔をしていた。


「お兄ちゃん、でしょ?」

陽莉は確認するようにもう一度聞く。

だが、はいそうです。なんて言えるわけがない。


「お兄ちゃんって新一にいちゃんのこと?
僕まだ小学生だよ?」


「なんでそうやってはぐらかすの!?
蘭さんには言えなくてもせめて私にくらい言ってよ・・・!」


涙でぐしゃぐしゃになった陽莉の顔。
俺の心はこれだけでしめつけられた。


「私・・お兄ちゃんにあんな態度とっちゃって謝らなきゃ、ってずっと思ってた
後悔したの
もし困ってるなら私だって力になりたい!
博士だけよりもう一人いた方が心強いでしょう!?」

ああ、陽莉にこんな顔をさせているのは俺だ。
ごめんな、陽莉。


「しょ、証拠はあるの?」

「え?」


「証拠もないのに僕が工藤新一だって決めつけるのは違うんじゃないかな?」


「・・・・・。」


妹がここまで言ってるのにはぐらかすなんて。

そんなに今関わってることは危ないことなの?


「・・・分かった
ごめんね、コナンくん」


陽莉のこの一言でコナンはほっとした。
と、同時に襲いくる罪悪感

「ねえ、二人きりのときはお兄ちゃんって呼んでもいい?」


「・・・・」


コナンからの返事はなかった。





沈黙は"YES"ともとれるんだよ

わかってる?
お兄ちゃん。