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お兄ちゃんの行くような場所はすべて探した。

なのにどうして見つからないんだろう。

肩に手が置かれ、見上げれば蘭がいる。


「陽莉ちゃん
取り敢えず帰りましょうか」


蘭の言葉に陽莉は小さく頷いた。
こんな時、新一のような推理力があれば、と心の中で思った。

不安・絶望
それらが陽莉を蝕んでいく。

粒の雨が頬を伝った。
・・雨だと思いたかった。
涙だなんて認めたくなかったのに。
口にはいるたびにしょっぱい味が広がる。


「陽莉ちゃん、」


「ごめ、なさ・・っ
辛いのは蘭さんもなのに・・・・・!!」


蘭は首を横に振った。
そして陽莉を優しく抱きしめる。
その優しさが妙に痛かった


ふと家を見ればあかりが見える。
無我夢中で走りだした。
ドアのぶをまわせば閉めたはずの鍵が開いている。


「・・お兄ちゃん!」


入り口から力一杯叫んだ。靴を脱ぎ捨て、部屋へとあがる。
扉を開ければ阿笠博士の姿

「阿笠博士・・?」


「や、やあ
陽莉くん、蘭くん」


「なんで博士がここに?」

「いや〜・・
新一くんに本を借りてたから返しに来たんじゃよ」


「お兄ちゃんが博士に本を・・??」


一応本の数やどこになにがあるかは把握してる。
陽莉は今日書室にはいったがなくなった本は一冊もなかった。

なんで博士はそんな嘘を?

「うわー!!
相変らずすごい本の数ねー!!
それも推理小説ばっかり」

後から部屋へとはいってきた蘭が声をあげる。


「あ、ああ・・
新一くんの父親は、世界的推理小説家じゃからのー・・」


「こんな本に囲まれて育ったから、新一が推理バカになっちゃうのよ・・」


「うっせえなー・・」


蘭の言葉に反応するように机の後ろから声が聞こえた。

そこには小学生ぐらいの男の子がいて、後ろを向いてた男の子を振り向かす蘭。可愛いー!なんて言って抱きついてる。
陽莉は呆然とし、その場に立ち尽くした。

その声、その姿。
江戸川コナン、なんて名乗ってるけど長年一緒にいた妹の私になら分かる。

きっとこの子はお兄ちゃんだ。
気を抜けば涙がでそうなくらい嬉しい。
でも確信がない。
あのお兄ちゃんだもの。
言ったって素直に教えてもらえるはずもないし証拠をだせって言い張るはずだわ
蘭さんがいる手前、なぜ、と聞けなかった。
コナンくんは蘭さんの家に居候することに決まった。玄関で阿笠博士と一緒に見送る。
陽莉にひそひそと話をする蘭。



「陽莉ちゃんも住む?
アイツがいないんじゃこんな広い家に一人なんて・・」


「・・いえ、私がここにいないとお兄ちゃんが帰ってきたときに寂しがりますから」


力なく笑う私を見てなぜかコナンくんが寂しそうに目を伏せた。
そんな表情をしないで
私なら平気だよ、お兄ちゃん。

手をふり別れ、阿笠博士に声をかける


「・・博士」


「な、なんじゃね?」


慌てる博士。


「コナンくんってお兄ちゃんですよね?」


「・・いや、陽莉くん、それはじゃな・・」


「無理には言わなくていいんです。
きっとお兄ちゃんには言えない理由があって私や蘭さんが巻き添えをくわないようにって思ってるんでしょう?」


「さすが陽莉くんじゃな」


お手上げといった表情をする阿笠博士。


「ふふっ
誰の妹だと思ってるんですか?
あの名探偵工藤新一の妹ですよ?
勘だけは妙にいいんです、私!」


ふふふ、と陽莉は微笑んだ。
それに阿笠博士は苦笑い。


(新一くん・・
君の妹は将来いい探偵になりそうじゃぞ)