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普通が良かった。

なんて今さら言っても仕方がないことで。


「・・・あ、」


目の前を見ればお兄ちゃんがいた


「お兄ちゃ・・っ」


「ねえねえ、聞いたー?
あの高校生探偵、またお手柄なんだってー!」


・・・またか。
この言葉を聞いたの何回目だろう。
走る途中そんな言葉を耳にする。
お兄ちゃんにも聞こえてたみたいで上機嫌で笑ってる

「まさに彼こそ、日本警察の救世主といえましょー!」


「ハッハッハ」


ボフ!と柔らかいなにかが新一を襲った。
振り向けばそこには幼なじみの毛利蘭と妹の陽莉がいる。


「バッカみたい!
ヘラヘラしちゃって
・・」


「そんな変な顔して笑わないでよ、お兄ちゃん!」


「よお、陽莉!
お前も今帰りか?
それに、なに怒ってんだよ、蘭?」


「べつにー・・
新一が活躍してるせいでわたしのお父さんの仕事が減ってるからって、怒ってなんかいませんよー!」


舌をだし、あっかんべーをする。


「あれー?
蘭の父さんまだ探偵やってたのか?」


「こら、お兄ちゃん!」


お兄ちゃんはいつも蘭さんに向かって憎まれ口ばかり言う。
困ったものだ。
更に余計な一言を言ったのか蘭さんが放った拳が電柱へ命中され穴があいて粉々

「さ、さすが空手部女主将・・」


「今のはお兄ちゃんが悪いんだからあたっても文句言えないよ!」


「怖いこと言うなよ陽莉・・」


それから延々とお兄ちゃんはコナン・ドイルだのホームズだの語りだした。
・・はっきり言って不愉快だ。
キラキラしながら話すお兄ちゃんは好きだけど好きじゃない。

別れ際、不機嫌な蘭さんがお兄ちゃんに問い掛ける。


「明日の約束、忘れてないでしょーねー!」


「約束・・?」


忘れたような口で言うお兄ちゃんに蘭さんの蹴りが幾つも繰り出される。
それを避けるお兄ちゃんはすごいと思う。


「言ったじゃない!
わたしが都大会で優勝したら遊園地連れてってくれるって!!」


「あれー、何の事?」


「もお、いいわよ!
別に新一なんかと行きたくなかったし!!
ファンレターの女の子とでも遊んでればー・・」


「ジョーダンだよ、ジョーダン!
怒るなよ!
ちゃんと覚えてるよ!
明日の10時、トロピカルランド!」


お兄ちゃんと蘭さんの話てる内容に耳を疑った。

だって、明日は・・


「わりー、陽莉!
そういうことだから明日一人で留守番できるよな?
夕飯までには帰ってくるからよー!」


「・・お兄ちゃん、明日はなんの日か覚えてないの?」

「へ?」


「・・お兄ちゃんのバカッ」


それだけ言って一人で走って帰ってしまった自分に後悔した。
きっとこの時は苛々してたんだな、って今になって思う。
もっと優しくしてあげればよかったなあ。



お兄ちゃんが行方不明になったのは私の15歳の誕生日だった。