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毎朝通る見慣れた景色
私の右隣には蘭さんがいてその隣がお兄ちゃんだった
たわいもない話をしながら歩く時間がたまらなく好きで、幸せだった。
それが今は右隣にいる蘭さんは変わらないのに左はお兄ちゃんでなくコナンくんだ。
小学校で別れ中学で別れ、そして蘭さんは高校へ向かう。
それが今の光景だ。


「ねえ、陽莉ちゃんのとこに新一から連絡あったりする?」


「え・・?」


「たま――に、だけどアイツから電話で連絡あるのよね!
でも全然陽莉ちゃんの話をしないから気になっちゃって・・」


きょとんとなる。
お兄ちゃんってば私の知らないところでそんなことしてたんだ。


「・・へえ〜」


「なんだよっ」


にやにやしながら冗談まじりにコナンの方を見ながら言えば頬を赤くして私をじとっと見た。
照れなくったっていいのに

「蘭さん!
お兄ちゃんが帰ってきたら気の済むまで殴ってくださいね!」


陽莉は拳をぐっと握り蘭の方を見てそう言った

(げ・・・!)


「やだー、陽莉ちゃんってば
もちろんそのつもり!」


"あはは"

蘭さんは笑ってるのになぜか笑顔が黒く感じた。
同じように笑ったけど苦笑い。
、といきなり手を引っ張られて姿勢を低くかがむと横にはちょっと不機嫌なコナンの顔。


「おい、陽莉
余計なこと言ってんじゃねーよ!」


「えー、なんのこと?」


「くそっ
可愛い顔してとぼけやがって・・」


相当シスコンなお兄ちゃんです(笑)



「どうしたの?
陽莉ちゃん、コナンくん?」


「なんでもないよ!
蘭ねえちゃん!」


「ぷっ・・」


「・・・オイ」


だってあのお兄ちゃんが"蘭ねえちゃん"なんて呼んでるんだよ?
笑わずにいられますかって

「ほらほら
遅刻しちゃうぞ」


「こんにゃろ・・」


コナンのランドセルをぐいぐいと押してやる。
遠くの方で友達なのか4人ぐらい手をふってるのがみえた。(あ、手をふってるのは3人かな)
コナンはそこへ走っていく
その姿を見送り、安心のため息をもらした。


「さて、蘭さん
私たちも行きましょうか」

「私今日はここで園子と待ち合わせなの」


「あ、じゃあ私先に行きますね!」


蘭と別れ、中学校に行く途中、陽莉の視界に飛び込んできたのはおっきなテレビに映った怪盗キッドの予告状だった。

"月の光が満ちるとき
20日の19時
ブルームーンを頂きに参ります。
怪盗キッド"

ブルームーンと言えばあの数億円の高い代物だと、園子から聞かされたことがある。
もともとはどこかの貴族のものだったものを鈴木家が買い取ったのだとか。


(元値が高いのにいくらで買い取ったんだろ
・・
さすがお嬢様だなあ)


鈴木家恐るべし。
陽莉の脳にはそればっかが浮かんだ。





キーン、コーン、カーン

授業終了のチャイム音が鳴るとともに陽莉は猛スピードで学校をあとにした。


「こら!
工藤――!授業は終わったがホームルームは終わってないぞ!」


「今日はスーパーの特売なんです!」


「スーパーがどうした!
戻らんか、工藤――!」


先生の叫びも虚しく、陽莉の姿は小さくなり見えなくなった。


(いくらお父さんとお母さんがお金を送ってくれてるっていっても無駄遣いはできないからねっ)


曲り角。
誰かと激しくぶつかってしまった。


「きゃ!」


声をだしたのは陽莉ではなく向こうの女の子だった。
セーラー服を着て、さらさらの髪の毛にぱっちりおめめ。
とにかく可愛い!


「ごっごめんなさい!
よそ見しちゃってて・・」

女の子はぺこりと頭をさげて謝ってくれた。
なんだかきゅんってなった
女の子同士なのに。


「こちらこそごめんなさい
ケガはなかったですか?」

「青子は大丈夫よ!」


この子は青子ちゃんって言うらしい。


「おい、青子!」


青子の後ろから小走りで走ってくる少年。
声は覚えがなかったが顔は忘れるはずがなかった。
だって・・


「あ」


「あ・・っ
この前の!」


お兄ちゃんそっくりさん
この制服、確か江古田高校のだ。


(・・あれれ?
ん―――・・)


ってことは


「やっやだ・・!
年上だったんですね!?」

「は?」


「てっきり同い年だって勘違いしちゃってて・・
ほんとすみません!」


「同い年、って
お前いくつだよ」


「15になったばかりです」

「・・・・・」


中・学・生


「バーロー!
俺は高校生だ――!」


「ひい・・!
ごっごめんなさ・・っ」


「なに怒ってんのよ、快斗!
怖がっちゃってるじゃない
間違えられたくらいでなによ、もお――っ!」


「けっ!」


青子の後ろに隠れつつ、涙目で少年、快斗を見つめた

(ヒステリック・・!)


助けてもらった王子様はとても格好よかったのに、ほんとはとてもとても怖い人でした。