004
「ただいま」
靴を荒々しく脱ぎ捨てて静かにそう言った
奥からでてきた高校生くらいの少年は菜々を見るなり笑った。
「・・ちょっと
なに笑ってるのよ」
「・・いや?」
「喧嘩売ってるなら買うわよ」
冷蔵庫から取り出したミルクアイスを口にはこぶ
「こえー
それより学校初日はどうだ?」
「超つまんない」
普通の小学生なら笑顔で今日あった出来事を喋りだすのが当たり前だと思ってたのは自分だけだったのだろうか?
笑顔どころか不機嫌だ
「周りはみんなガキばっかだし、ほんっと最悪。」
「はは・・
まあ、そう言うなって」
小学生とは思えない口調でばっさりと言い捨てる菜々に少年、黒羽快斗は苦笑いした
相当気に入らなかったらしく眉間に皺がよりまくっている
なにがあったのかは聞かないでおくがかなりご立腹なようだ
「特にあのメガネのヤツ!
江戸川コナンっての?
名前からして気に入らないわ!」
「名前はいいとして・・
メガネの探偵坊主になにかされたのか?」
「なに?
快斗知ってるの?」
「まあ、ちょっとな」
「・・・?」
嬉しそうに笑う快斗。
こっちは苛立ってるってのに。
「大体私が小学校に通うなんて無謀だったのよ
大学生の私が!」
「なんだよ菜々
まだそのこと言ってんのか」
この佐原菜々は本人曰く、自分は大学生でこの世界の住人じゃないという少し(?)オカシイやつなのだ。
「・・今、頭おかしいやつって思ったでしょ」
「え゛」
ずばり当てられて"なんで分かったの"って顔をする
菜々はそんな快斗を見てふう、と小さくため息をはいた。
「だって快斗分かりやすいんだもん
ポーカーフェイスって言ってるぐらいなのに
・・・あ、当たり」
アイスを食べ終え、棒には当たりの文字。
まだ溶け残ってたアイスの水滴をぺろり、舐めとった
「くっそ〜!
他のやつは分かるのに菜々だけ読めねえ・・」
今度はソファーに体育座りで自分の膝にのせて本をよみはじめた菜々を見てそう言った。
アイスを食べて機嫌はなおったみたいでやんわりと微笑んでいる。
(・・ったく
普段からあの顔してりゃいいのによ)
見た目は子供なのに大人っぽい。
まったく困ったものだ。
「・・お」
なにかを発見し、拾う。
ひっくりかえして見ればぎょっとした。
そこには菜々が写ってたし、今より美人だったそれに書かれてた住所はこの世界には存在しない。
「おいおい
マジ・・?」
菜々をこの自宅前で倒れてたとこを助けてから2週間目。
疑ってたことが事実にかわる、という衝撃的な出来事に快斗は頭が痛くなった。
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