探偵 | ナノ


「・・平ちゃん」

「なんや?」

「・・平ちゃんってば!」

「だからなんや!」


さっきからこの言葉が2人の間でぐるぐるとまわっている。
わかりやすく手をさしだしてるのに肝心の本人はまったく気がついてないってどういうことなの?
子供が買ってほしいものを買ってもらえなかったとき、のような
女の子なのにものすごく不細工な顔だったと思う。


「なんや、そんなふてくされた顔しよってからに」


「・・平ちゃんには一生分からへん話や」


「なんやソレ」


またぷっくう、と頬をふくらます。
隣で小さく吐かれたため息はさらに機嫌を悪くさせた

「平ちゃんは鈍かったんやな」

「・・話の主が分からへんぞ?」

「もうええわ
ウチこっちやから」

「は?なんや急に・・!」
「ほなさいなら」

身を翻し、手を軽くあげる
歩きだそうとしたとき、


「ちょお、待ち!」

「わ・・!?」


手を引っ張られ、身体ががくんとなった。
ゆっくりと視線をやれば彼の怒ったような渋い表情と
・・・繋がれた手。
(捕まえられたんだけど)

それだけなのに嬉しくて嬉しくて、私の顔はふにゃってなった。
繋がれた手は、ぶっきらぼうだけど優しくて。


「・・平ちゃん
手、あせばんどる」

「・・少しは黙ってられへんのか」


嬉しいから無理、

そう言えば彼は赤かったほっぺたを更に赤くして、


うっさいわ、と一言。
そんなに顔まっかっかにして恥ずかしがるなんて、柄にもないことしなければよかったのに。
彼はそんなこと考えもせず無意識に行動したのだろう