探偵 | ナノ


もうすぐ待ちにまったプールびらきの日。
すごく楽しみにしてたのに・・・なんて酷いんだろう


「じゃ、頑張ってねぇーん!」


「えぇっ!
園子、蘭手伝ってくれないの!?」


「私と蘭、この後ケーキバイキングに行くの!
だからプール掃除、頑張んな!!」


「ひっどーい!」


そう。
運が悪いことに、くじ引きでプール掃除の当番になってしまったのだ。
プールは大好き。

だが。



「掃除は好きじゃないよー!!」


誰もいない、広々としたプールサイドに立ちモップを上に持ち上げて叫んでみる。
別に1人でやるわけではない。
でももう1人のヤツ・・

工藤新一!

蘭の幼なじみである彼は大の推理小説オタク。
別にキライではないけれど正直あの話にはうんざりしてる。
悪い人ではないことは分かってるのに、どうもうけつけない。
はっきり言って苦手だ。
そんな人と2人きりでプール掃除なんて、神様は私に死ね、ってことですか!


「わりぃ、遅れた!」


なんて、悶々と考えていればご本人登場。
息をきらして、汗だくだ。

「・・・、走ってきたの?
別によかったのに。」


この言葉には"来なくてよかった"が含まれていることを新一は知らない。


「今からだし、早くやっちゃおうよ。」


「お、おぉっ」


近づいてモップを渡せば新一は体をびくつかせた。
なんだか顔が赤い。


「工藤くん顔赤いけど、風邪?」


「・・・っ!」


「もし具合悪いなら私やるから帰っていーよ?」


むしろその方が楽だ。



「いや、顔があけぇのは熱なんかじゃなくて・・」


「・・・?」


もごもごと口籠もりながら喋る新一に不思議がる。
一体なんなんだ。


「・・・好きだ。」


「んむ、」


気付けば新一にキスされて。
彼の腕の中にいた。
手から落ちたモップがガラン、と派手に音をたてる。
いきなりすぎてどうしたらいいか分からない私の隙をつき、新一の舌がはいってくる。



「・・・・・!?」



すぐさま我に返り、必死に抵抗する。
だけど力には適わなくて。手を上に振り上げておもいきり新一の頬を叩く。
ばちん、と軽快な音と新一の呻き声がプール内に響いた。



「いってぇ〜・・!」


腫れあがった頬をおさえて痛みに耐える。
そんなこと関係なく、新一と距離をおこうと少しずつ後ろへと体をやる。
だが、後ろがプールだと忘れていた私は見事足を踏み外し、プールに落下したのだった。



「・・・ぷはっ
げほっ!・・・ぅぇ、
水飲んだ・・・っ」



サイドに倒れこみ、飲み込んだ水をはく。
新一は慌てて、背中をさすってやった。



「大丈夫か?」



「うん・・大丈夫・・」



「大丈夫なら早くあがった方がいいぜ。
お前の方が風邪ひいちまう。」



「大体、工藤くんがあんなことするから・・!」


「あんなこと?」


「・・・!
キス・・とか、」


「だって、お前可愛すぎんだからしゃあねぇだろ?」

「か、かわっ!!?」


なにを言いだすんだ。
慣れない言葉に顔が真っ赤。
相当動揺していて口パクしながら彼を見上げることしかできない。
しかも新一までプールにはいってきた。



「ちょ、工藤くん!
なにして・・っ」



「新一、って呼べよ。」



なにその上から目線な言い方は。
もっと他に言い方あるだろう。



「よ、呼べるわけないじゃん!!」



「ふーん・・じゃあ無理にでも言わせたくなってきた。」



「は・・・?」



新一はそう言ってにやりと笑うと衣服に手をかけた。そのままべったりと体にはりついたシャツのボタンをはずしていく。



「ちょ、」



両手を纏められて、抵抗できない状態。
・・・これはマジでやばい状況になってきている。
このままいけば私はこの変態推理バカオタクの工藤新一に犯されてしまううぅうううッ!!!



「こらー!
おまえらなにやっとんだ!」



ナイスタイミング!
担任!



「・・ちっ」



現れた先生に舌打ちした工藤くん。
空気よめよな、なんて言ってる。
先生可哀想。




「掃除してたんすよ」



「お前は掃除をするのにいちいちプールにはいらんといかんのか!」



プールからあがる新一に怒鳴る先生。
あまりの大声に私まで耳を塞いで顔を歪めた。

そのあと私達2人は先生の有難いお説教を延々と聞かされるハメになった。

これもすべてコイツのせい
新一を横目で睨む。

今日でさらに工藤新一のことが大嫌いになった。



そんな不幸のエピソード。