嫌な夢を見てしまった。
暗い闇の中で新一が、殺されてしまう夢。なんて縁起でもない。飛び起きた私の額は汗でぐっしょりと濡れていた。辺りを見回し、それは夢だと確認した。かたかたと小さく震える。翌朝、かなり早い時間に家を飛び出した私は一目散に新一の家へと駆けていった。何度も何度もやかましくチャイムを鳴らせば新一は顔を歪ませて、怒鳴りながらでてきた。私だとわかれば、いつもと変わらぬ新一。そんな新一にほっと心が安心する。涙をうっすらと滲ませて新一に抱きついた。
「よかった・・!新一っ
生きてた・・・」
「バーロォ!
勝手に殺すんじゃねぇよ!
てか、こんな朝早くどうした?」
ぼろぼろと新一の腕の中で泣きじゃくる私の頭を優しく撫でる。
「いや、だ・・
やだよ!
いなくならないで・・」
「はぁ?
だから訳わかんねーって」
自分がした質問とは全く違う答えが返ってくるもんだから困ったもんだ。
「慌てすぎて時間間違えたのか?」
ぶんぶん、と首を横にふる
「・・・っ
新一が!!」
「俺?」
なにか気に障るようなことをしただろうか?思いあたることはなく、頭を絞る。
(なんにも思い浮かばねぇ・・・・!)
顔からさぁっと血の気がひいてく。これは嘘でも謝るべきか。しかしまったく見に覚えがないのだから謝れない。そんなことすれば拳が飛んできそうだ。震えが止まってた体はいつのまにか震えだしていた。
「新一っが、いなくなっちゃう夢を見たの・・・!」
それだけか細い声で言えば更にぎゅうっと新一の体に手を回して抱きついた。
「は・・?
んだよ、それ・・」
たったそれだけの理由でここまで来たのか?真冬な道は暗いし、寒い。灯りも少ないこの道を女1人で。
"馬鹿野郎。"
腕の中にいるコイツにそう叫びたくなった。俺のことなんかどうでもいい。むしろ、コイツになにかあったらって考えれば気が気でない。
なんでお前は俺優先なんだよ・・・
もっと自分を大事にしてくれ。
そう言いたい言葉は喉の奥で止まってしまってでてこなかった。
腕に湿った感覚がする。
泣くな、泣くんじゃねぇよ
「俺はここにいるから・・」
「うん・・
でももうしばらくこのままがいい」
私を放さないでね、新一。
この数日後、蘭から新一がいなくなったと連絡を受けた。