彼と出会ったのは真冬の雪が降る公園だった。
全身白い色の洋服で包まれてる彼は、雪と統一されていて、違和感が全く感じられない。
「あなたは・・こんな所でなにをされているのですか?」
そう彼に問われれば、
「・・あなたこそ」
冷たく言い放ち、そっぽを向く。
「あなたと言う人は・・冷たい人ですね。」
ちらっと、彼の方を見る。
「あなたと話すことなんてないもの。
怪盗さん。」
彼は今、世間を騒がせている怪盗キッド。
宝石を盗んでは、返す。
自分の欲しいものが見つかるまで・・
その繰り返し。
そして・・今日盗んできたものも。
彼が盗んできたものをじっと見つめる。
「・・・それもお目当てのものじゃなかったの?」
その言葉を聞き、怪しく笑ってみせる。
「・・・ご名答。
心配なさらなくてもすぐにお返ししますよ。」
不信に彼を見る私にそう言ってみせる。今までそうなのだから疑う必要はないのだけど。彼はゆっくりと近づいてくる。左の膝をついてしゃがんだかと思えば、私の手をとり軽くキスをおとした。
その行為にかたまる。
「ちょ・・・っ」
「・・・今度は、あなたの心を盗みにまいりたいのですが。」
そう言って見せる彼の顔は悪戯っぽく笑っている。
彼はやっぱり“キザな怪盗”だ、と思った。
雪が真っ白くつもった白銀の世界での誰も知らない、彼との約束。