初めて彼がテレビに映った瞬間、私は一瞬で恋におちた。
"怪盗キッド"
気がつけば、ただひたすら彼を追いかけている自分がいた。彼が現れるという現場に足を運ばせたことは何回もある。怪盗という許されないことをしてるのに捕まってほしくないと思う。
「・・怪盗、なのにね。」
今日もキッドから予告状がだされた。きっとあなたには気づいてもらえないと思うけどあなたに会いたい
「絶対、振り向かせてみせる。」
いつか、きっと。
小さく呟き、彼のもとへ。その時の私の顔はたぶん、緩やかに笑っていた。
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「キッドが現れたぞー!
追え!!」
警察がキッドを追いかける中、私もキッドを追いかけた。キッドが向かった先は、深い深い森の中。
「この辺りだと思ったんだけど・・」
彼の姿は全然見えなくて。自分は不覚にも迷子になったらしい。(らしい、じゃなくて、そう。)
「こんな遅い時間に、女性の1人歩きは危険ですよ。」
いきなり背後から声が聞こえたので振り向きざまに身構える。
「・・・キッド!」
そこには会いたかった彼の姿。
「あなたはいつも私を見ていましたね。」
「気づいて・・くれてたの?」
嬉しさで涙がでそうになる彼はいつもと変わらない表情で、見つめてきた。大きな掌で私の頬を包み込み、彼の唇があたる。
「・・・どう、して?」
突然の行為に目を丸くする私に彼は、
「・・・男は、好きじゃない女性にでもキスできるものですよ。」
彼らしくないセリフ。
「嘘。」
あなたはそんな人じゃないもの。
「嘘じゃありません。
警戒心というものを持ってください。
あなたは女性なのですから」
彼が否定を続けるものだから、ついついしかめっ面になってしまっていた。
「・・・そんな顔をしていたら、せっかくの可愛らしい顔が台無しですよ、レディ。」
「・・・名前、で呼んでよ」
私は、不満そうな声でそう訴える。
「それはできませんね。」
「・・・ッ!!
あなたに会えるのは・・最後かもしれないのに?」
泣きそうな私に彼は2度目 の口付けをした。ゆっくりと唇は離れて一瞬だけどフリーズする。
「・・・今度は私が会いに行きますよ。」
彼はそう告げて静かに姿を消した。残ったのは期待と不安、そしてさらに大きく膨れ上がった彼への恋心。
初めて見た時から、私はあなたに夢中。