探偵 | ナノ


いつも眠そうにして教室にはいってくる彼は、一番苦手だったりする。
運がいいのか、悪いのか。席替えをしたら隣に彼・・黒羽快斗くんがいた。彼は他の人と違い、話しかけずらいオーラを纏っていてあまり喋ることはなかった。その彼に視線を感じる日もあったけどさほど気にもとめていない。おんなじクラスの中森さんとは仲がいいみたいで。毎日、毎日夫婦漫才みたいなものが繰り広げられる。そんな彼の表情はいつもの時よりいきいきして見えた。机の上で頬杖をつき2人を眺める。


(あんな顔、するんだ。)


よく飽きないな、と思いつつ1限があたることを思いだした宇理は教科書をめくり、問題に目を通しながらノートに写しはじめた。


「そこ、違う。」


「・・・え、」


いきなりさっきまで中森さんと戯れていた(喋っていた)黒羽くんが喋りかけてきたので驚きながら振り向く。しかも初めての会話が問題のダメだしって・・・。


「ここは、こうじゃね?」


「・・・、!」


自分はそこそこ勉強ができるほうなのに、できなさそうに見えた(勝手に)黒羽くんに教えられて、なんだか屈辱だ。


「・・思考が顔にでまくってんぞ。」


「えっ!?嘘!!」


黒羽くんにそう言われ、慌てて鏡を覗く。代り映えのない顔を睨みつつ百面相。


「ぶはっ!すげー顔!!」


私の顔に黒羽くんは大爆笑。


「・・・笑うこと、ないじゃんか。」


「わりー、わりー。」


苦しそうに笑う黒羽くんにむぅ、と膨れっ面。


「みんなにも教えてあげればいいのに」


嫌味っぽく言い放ち、そっぽをむいた。
なんだか悔しかったから。振り返ってみれば、そこには顔を赤くしてる黒羽くんがいた。


「バーロ、お前限定だよ」


「・・・ッ!!」


・・・そんな顔で、声で、言わないでよ。自分の顔が赤いのは、彼の顔が赤いからつられたに決まってる。・・・なのに、この気持ちはなに?




「俺、宇理が好き。」





彼の一言で恋と確信する。