幻想水滸伝T



●坊+フリック


「俺は今でも解放軍を率いるのはオデッサしかいないと思ってる」

そう呟いたフリックに、僕は何も言えなかった。
彼が僕を認めてくれたのは間違いないけれど、彼女を過去にすることなどできるわけがない。
それはフリックだけでなく、僕だって、ビクトールたちだって同じだ。

「そんな顔するなよ。今の解放軍を作り上げたのはお前なんだ。胸を張っていい。ただこれは気持ちの問題だから、悪いな」
「いや、僕も、あなた程ではないにしても、同じような気持ちだから」
「……そっか」

切なげに笑うフリックに、どう言葉をかければいいかわからない。
現リーダーの僕が、仲間を元気づけることすらできないなんて。

「勝とうな、リーダー」

それどころか逆に励まされてしまうなんて。
頭にポンと乗せられたフリックの手は優しくて、先に旅立ってしまった親友の笑顔がよぎる。
涙が溢れた。






●坊→ビッキー


「今日はどこに行くの?」
「カクまで頼むよ」
「カクならわざわざテレポート使わなくても、すぐだと思うけどなぁ?」

クスクスと笑う彼女から魔力が放たれる。
それは僕らを包み込んで、周りの景色を歪ませた。

「いってらっしゃい」

君のその言葉が聞きたくてテレポートをお願いしてるだなんて、言えやしない。






●坊+テッド


「俺を信じてくれ」

そう笑うテッドは、どう見たって大丈夫には見えなくて。
見た目は僕と同じくらいなのに、この悲しい覚悟を秘めた瞳をしているのは、300年という長い月日のせいなのだろうか。
長く夢見た終わりがこんな結末だなんて。
僕は本当にこのまま逃げていいのか。
ああでも捕まってしまったら、それこそテッドの300年は無駄になってしまう。
胸がドクドクと鳴り、ズキズキと痛む。
グレミオとクレオに連れられながら見る、遠ざかる彼の笑顔。
僕の、世界一の親友。
頼むから、必ず追いついてくれよと願い、勝手口の扉を閉めた。





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