スパイラル


●歩→理緒←香介


「はうっ!」

あー、またこけやがった。
何で何もないとこで転べるのかねー。

「おーい、大丈夫か理緒」
「はう〜、痛い……」
「あ、ほっぺ擦りむいてんじゃん」

ちょっと涙目な理緒を可愛いなぁと思いながら、頬に手を伸ばす。
あと少し、というところでこの手を止めた。(実に惜しい)
背後から痛いほど突き刺さる殺意のこもった視線。
あーやだやだ。男の嫉妬は醜いぜ〜。
と言おうと思ったが確実に殺られるので止めておく。

「理緒に触るな、浅月」
「はいはい……」






●歩×理緒+香介


「アンタ、最近弁当なんだな。前はパンを買ってたのに」

自分の弁当をつつきながら、歩は理緒にそう言った。

「実はですね、こーすけ君が作ってくれてるんです」
「浅月が!?」

てっきり理緒が自分で作っているんだと思ったが、意外な名前が出てきて必要以上に驚いてしまった。

「何だよ、鳴海弟。そんな驚かなくてもいいだろうが!」
「悪い。お前が料理できるとは思わなかったから……」
「失礼だな」

香介が拗ねて自分の食事に戻る。

「しかし何でまた浅月が?」
「こーすけ君、亮子ちゃんに弁当作るように頼まれたそうなんです。だからそのついでにあたしのも作ってくれることになって」

ああ、成る程。
こいつは高町に頭があがらないみたいだからな、と歩は納得した。
だが、目に入るお揃いの弁当。
理緒の方は若干可愛らしめに盛りつけてあるが(それを香介がやっていると思うと少し笑えるが)、中身は同じ。
それを理緒は「美味しい」とにっこり笑って食す。

なんだか……
おもしろくない……

「……おい」
「何でしょう?」

不思議そうな顔をしてこちらを向いた理緒を見て、少し考えて、言う。

「……明日から俺が作ってやる」

まさかそんな言葉がかかるなど思ってもいなかった理緒。
さらに微かに頬を染めている歩を信じられないという目で見る香介。

「どうしたんですか弟さん!?」「何事だ鳴海弟!?」

息はぴったり。
そんな二人の剣幕に押され気味の歩。

「いや、浅月も三人分だと大変だろう。だから、だな」

まさか小さな嫉妬とは言えず。

「と、とにかく!俺が作るから。いいな?」
「はう〜♪もちろんですよ!弟さんの料理を毎日食べれるなんて嬉しすぎです!」
「まあ、理緒がそう言うんなら俺はいいけど」

理緒は今後を想像してにこにこ。
香介は何か感づいたのかにやにや。

「じゃあ、何かリクエストあれば聞くけど」
「そうですね〜、タコさんウインナー入れて欲しいです!」

彼女の子供のような笑顔と言葉に歩は笑った。

「アンタ、本当に高校生か?」
「失礼ですね〜」

笑いあう二人。
楽しそうな二人。

神など信じてはいないが、二人の幸せを祈りたい。
そう香介は思い、残りの弁当に専念することにした。


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