●鉢屋(現代)


片方の耳で音楽を聴きながら廊下を歩く。
先生に見つかったら即没収だろうが、そんなヘマはしない。
両手には抱えるのがやっとなくらいの量のパンと500mlパックの飲み物を四つ。
奴等の好みなんて知ったこっちゃないので自分の好きなパンばかりを買った。
文句を言われるのは必至だが、俺をパシリにしたのが悪い。
いやそれはジャンケンで決めたんだからしょうがないんだけど。






●5年


「ここに食堂のおばちゃん特製の大福が一つある」

ごくり、と唾を飲む音が響いた。
そろぞれの目を見やり、お互い引くつもりがないのを確認する。

「ここは忍たまらしく武術で勝負はどうだろう」
「それじゃ三郎と兵助の一騎打ちじゃねえか。やっぱジャンケンだろ!」
「やだよ。八、異様に強いんだもん」
「じゃあくじ引きか?」
「雷蔵がどれ引くかで迷いそうだな」

ああでもない、こうでもない。
方法をあげては消していく。
各々得意分野へ持っていこうと必死だ。
なかなか決まらないのを見かねて、兵助は口を開いた。

「なぁ、四つに分ければいいんじゃねえ?」

「「「それじゃつまらんだろ」」」


―――――
みんなでバカやってりゃいい。






●鉢屋


おや、もういくの?
もっと遊ばないかい?
ほら起きろよ
つまらないじゃないか
私を置いていくなんて、お前はなんて薄情なんだ
あぁでも嫌いになったわけじゃないから安心しろよ
ただもう少し付き合ってくれればいいだけなんだ
さあ、早く
殺りあおうよ






●久々知→


ぐっと掴んだのは虚空のみ
それ以外には何もない
手を広げるとあると思ったその白い肌はなく
それは夢だったのだと気づかされた

あぁ最後に君の姿を目に焼きつけて
君を味わいたかったと
今さらそんなことを考えても遅いのだけど


―――――
シリアスと見せかけて久々知→豆腐






●鉢屋


ぬるりと生温かい血が手を染める。
気持ち悪いと思うから気持ち悪いのだ。
例えばそう、これは舐めたら甘いのだと考えてみようか。
ほら今にも舌をのばしたくなる。
それともこれだけじゃ足りないかい。
ならばこれで自分の心の蔵を突き刺してみるといい。
真っ赤な染料への愛しさも一層増すだろう。






●久々知


何がそんなに嫌なんだ?
手が真っ赤に染まるのがそんなに恐ろしいか?
何を恐れることがある。
これは我らが忍である証だ。
恥ずべきことなどひとつもないよ。
むしろ誇るべきことではないか。





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