●鏡夜→馨
馨の笑っている顔を見たくないと思ったのは初めてだった。
いつも光と一緒にいて、環やハルヒをからかっては笑う。
それだけならよかった。
でも最近ではどうだろう。
確かに笑ってはいるけれど、その中に何か違うものが含まれている気がして。
気になって仕方がない。
何がそんなに不安なんだ?
なんて、大方予想はつくのだが。
「じゃあ鏡夜先輩が慰めてくれるわけ?」
馨に気持ちがないのはわかっているのに。
俺にとって何のメリットもないはずなのに。(むしろデメリットの方が多い)
どうしてこの腕は双子の片割れを抱き締めているのだろう。
●鏡夜×馨
ねーねー鏡夜先輩
どうした馨
眼鏡貸して
は?って、おい
うわー、変なのー
ぐらぐらする!
じゃあ返せ
目が悪くなるぞ
もうちょっと!
鏡夜先輩の見ている世界を見てみたかったんだ
……………
(そんな可愛いコト言われると抑えられなくなるだろうが……)
●鏡夜→馨
バンッ
音に驚き見上げると、眉を逆八の字にした馨。
はたして何に感情を昂ぶらせてるのか。
「今日はダージリンがいいって言ったじゃん!」
そんな子どもみたいなお前が愛しいんだ。
●鏡夜→馨
憂いを帯びた瞳が伏せられる。
ただそれだけなのに、何故コイツを美しいと感じるのか。
俺はどれだけ馨を愛しているのだろう。
それすらわからないけれど、今はその瞳を俺に向けてほしいと思うだけ。
●鏡夜×馨
ぼんやりと宙を見る。
「……眠いのか」
「……うん」
ちょっとだけ寝かせてね。
ごろんとソファに沈む体。
うとうとと心地よい微睡みの端に感じる動く気配。
遠慮の欠片も感じられないのにとてつもなく優しい手のひらが、朝ばっちりセットした僕の髪を撫でる。
気持ちいいな
このまま部活が始まらないといい、とか。
鏡夜先輩も思ってたりするのかな。
いや、ないか。
そんなの想像できないや。