●絳攸←秀麗


(あぁ、また迷っていらっしゃるのね)

少し焦った様子で、キョロキョロと辺りを見渡す彼。
勉強と方向感覚は頭の中でも違う部署に配属されているらしい。

迷子を連れ戻すのは自分の役目だと笑う某将軍に負けてられない!
対抗心に火がつく。

「絳攸様!」

私の姿を認めたときの彼の安堵の表情はきっと忘れられない。
これはやみつきになるのも仕方がない。

(だってとっても可愛らしい!)






●絳攸×秀麗


ぽんっと頭に置かれた大きな手
そこから伝わってくる体温
堪えていたものがあふれてきた

ああ、貴方は厳しい人なのに
何故そんなにも優しいのですか






●絳攸×秀麗


「私は絳攸様のこと、二番目に好きです」

静蘭も抜いちゃいましたね、と秀麗は微笑んだ。
それを聞いた絳攸もゆるりと笑う。

「俺は秀麗のこと、三番目に好きだぞ」

絳攸の言葉に僅か瞠目した秀麗は、頬を染め幸せいっぱいに笑んだ。

「なら私は世界一幸せ者ですね!」


_____
一番は黎深様、二番は邵可様






●絳攸←秀麗


「ああ、秀麗か……」

李の花を見つめる姿が淋しそうで、気づけば声をかけていた。
そんな目をしないでください。
そう言いたくて。

でもこちらを振り返る絳攸様の目はどこか辛そうで、それでも優しい光を湛えていることにはホッとしたけれど。
何も言うことができない。

私ではあなたの淋しさを拭うことはできないのでしょうか。

そう思うと泣きたくなった。






●絳攸×秀麗


冷たくかじかんだ手にハァッと息をかける。
少し擦るとじんわり熱を取り戻した。

「もういい、秀麗。お前の手のほうが冷たくなっているぞ」

そう言うと絳攸様は、さっきの私と同じことを私の手にした。






●絳攸←秀麗


昨日、藍将軍にお茶に誘われました。

そうか。

……静蘭と二人で買い物に行きました。

いつものことだろう。

………劉輝が夜ばいに来ました。

またか。まったく、主上にも困ったものだ。

……………絳攸様。

なんだ?

ヤキモチ妬いてくださいよぉ!

はぁ!?






●絳攸×秀麗


チリッと鋭い痛みが鎖骨辺りにはしった。

「……印、だ」

恥ずかしそうに絳攸様は呟く。
こんな印つけなくても、私は貴方以外目に入らないのに。
でも僅かでも私を独占したいと思ってくれたのが嬉しくて。

「じゃあ私もつけていいですか?」

絳攸様が返事をなさる前に、私は彼の形良い鎖骨に唇を寄せた。






●絳攸×秀麗


月の光を受けて輝く髪の所有者は、秀麗の膝の上で爆睡していた。
とりわけ強いわけではない酒を、某将軍につぎつぎと飲まされていたのだ。
酔い潰れても仕方がない。
久しぶりに会えたというのに話すことができなくて残念ではあるが、絳攸の寝顔を見ることができたので、それでチャラにしよう。

ふと手を伸ばし、秀麗は絳攸の髪を梳いた。
柔らかく手触りのよいソレは、するすると秀麗の手から零れ落ちる。
頬が自然と弛む。

こんなにも愛しい人に出会えたことを、誰に感謝すればいいのだろうか。

(とりあえずは劉輝に、かしらね)






●絳攸×秀麗


じっくりと味わうように、舌と舌が絡み合う。
お互い恋愛初心者だというのに、どこでこんな口づけを憶えたのか。
そんなことわかりきっていた。
ただただ愛を確かめ合う手段として、本能が憶えていたのだ。

「こ…ゆう、さま……」

息苦しくなった秀麗が俺の名を呼ぶ。
それがとても色っぽくて、戸惑った。

(まったく、どこで憶えたんだそんな誘い方。俺はそんなことまで教えたおぼえはないぞ)

きっとそれも本能。






●絳攸×秀麗


ぎゅってしてくれませんか

なっ、どうしたんだ秀麗?

ぎゅってしてください、絳攸様

秀麗?

ぎゅって、してほしいんです

……これでいいのか?

はい……大好きです、絳攸様
理由なしに抱き締めてほしいほど





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