「星空を見てみたいな」

作り物ではなく、本物の、満天の星を。
この子がそう願うのも無理はない。
淀んだ空しか知らない魔界の住人には、星空など無縁。
先人の遺産であるこのプラネタリウムでしか見ることのできないものだ。

「兄さんはいいな。見たことあるんでしょ?」
「ああ。ガイラルディア様によく屋敷を抜け出して付き合わされたからな」
「もう、またガイラルディア様のせいにして。満更でもなかったんじゃない?」
「はは。まぁ悪くないさ。星は綺麗だし、彼との冒険も楽しかった」
「いいなぁ……」

それは星空を見たことに対してというより、特定の人物と一緒に見たことへの羨み。
会ったことのない主人に、憧れと仄かな想いを抱きつつ、作り物の星空を眺める妹を、複雑な気持ちで見ていた。







2011/12/31
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