いつも見ていました。
見ているだけで、話せるだけで十分だったけど、やはり貴方にこの気持ちを伝えたい。

貴方のことが、好……


「ゔぁぁぁ〜〜〜っ!!!」

駐在所の一階で机に向かっていたグラッドは、突然声をあげて頭を掻き毟った。

(ラブレターなんて恥ずかしすぎる!)

ミント姉ちゃんは鈍そうだから、ちゃんと言わなきゃ伝わらない、というライの助言を受け、ラブレターを書くことにした。
だがなかなかうまくいかず、床は失敗作でいっぱいになっていた。

「だいたい、俺のガラじゃないんだ……」

そうぼやくも、勝手に腕は動き、新しい紙を取り出していた。





「こんにちはー。グラッドさーん」

この町に来てから日課となってしまったこと。
それは駐在所に顔を出すこと。
いつもグラッドが気に掛けてミントの家近くを入念に見回ってくれるように、ミントもグラッドのことを気に掛けて毎日様子を見に行く。
まともな食事を取れていないことを知ってからは差し入れも用意するようになった。

「すみませーん」

いくら声をかけても返事がない。
もしかして何かあったのだろうか。


「ゔぁぁぁ〜〜〜っ!!!」
「グラッドさん!?」

グラッドの奇声に驚いて、ミントは慌てて中へ駆け込んだ。
しかし心配したのも束の間。
グラッドは元気にペンを握って頭を掻いていた。

(報告書か何かかしら……?)

声をかけようと思ったが、フと床に散らばった紙のひとつに目がいった。


ミントさんへ

好きです。



一番シンプルに書かれたソレを見て、さすがのミントも察した。

「……………グラッドさん」
「わっ!?」

静かに声をかけたつもりだったが、やはり驚かせてしまった。

「すみません。何度も呼んだんですが……」
「い、いえ!気づかなかった自分のせいですので!」

ミントさんは悪くありませんよ、と言う前に、ミントが手に持っている紙に気がついた。

「あ、そ、それは、あの……」

みるみる間に顔が赤くなる。
そんなグラッドにくすりと笑いかけるミント。

「これ、本当ですか?」

少し嬉しそうに見えるのは脳が都合良く見せた錯覚だろうか、とグラッドは思った。

「本当……であります」

顔にさらに熱が溜まっていく。

「自分は、ミントさんのことが好きです」

ミントが浮かべた笑みは、彼女の家の庭に咲いている花のように美しかった。

「私も、グラッドさんのことが好きですよ」







2007/08/13
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