「散歩に行かないか」
そう誘ったガイに連れられて、ティアは真っ白な雪を踏みしめ、冷たい空気を全身で感じた。
防寒着の中にも寒さが伝わってくる。
ティアはその冷気にぶるっと震えた。
「寒いかい?」
「ええ、少し……でも平気よ」
寒いからと散歩を中断したくないという思いを、それとなく伝える。
「……じゃあ、効果はないかもしれないが」
と言ってガイはポケットに入れていた手を出し、冷えてしまったティアの手をとる。
その彼の手が震えているのは、決して寒さのせいだけではないだろう。
「ガイ、無理しないで」
「無理なんかしてないさ」
笑顔を浮かべてはいるものの、引きつっているのは明らかだ。
「でも……」
なおも食い下がろうとするティアにガイは淋しそうに笑み、「嫌かな?」と聞いた。
ずるい、とティアは思う。
嫌なわけがなく、むしろ嬉しいに決まっているのだ。
「本当に無理してないよ。寒いと急ぎ歩きになっちまうだろ?でもティアと少しでも長くいたいから、ゆっくり歩きたいんだ。
だからこうして手をつないで、ぬくもりを分け合ったらいいんじゃないかと思ってね」
ガイの言葉が終わるころにはティアは真っ赤になっていて。
確かに寒いのに、体はほてっている、不思議な感覚がしていた。
「……そうね。私もあなたとゆっくり歩きたいわ」
ティアはガイの手を握りかえす。
びくっとした彼に苦笑して、ゆっくりと二人で歩きだした。
2007/08/10