フッと彼女の手が触れた。
驚いて肩がビクリとはねる。
「あ、ごめんなさい」
気づいた彼女はパッと離れた。
「大丈夫だよ」
そんなに離れなくても、とは思ったが、以前の俺にちょうどいい距離を彼女はとっただけ。
昔の俺を少し恨む。
「ティア、ちょっとずつ近づいてみてくれないか」
「え?えぇ……」
彼女は大丈夫なの?といった顔で、やっくり近づいてくる。
一歩。
また一歩。
「っストップ!」
体がふるえはじめたところで彼女に停止を促した。
やろうとすれば、容易に抱き締めることができる位置に彼女は止まる。
彼女は驚いていた。そして微笑んで。
「もう少し、ね」
「あぁ、もう少しだ」
もう少しで、君を抱き締めれるよ。
―――――
あとはほんの少しの勇気!
2007/08/05
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