つやつやと光る小粒のラズベリー。
それを囲むよい色に焼けたパイ生地。
焼きたてのそれから食欲をそそる香り。
サクッと音を立て、ホロッと溶けると、ラズベリーの甘酸っぱさが口のなかに広がっていく。
「美味しいですね」
さすが王都で人気の店だ、とアニーは微笑んだ。
「ん〜……、3つ星だな!」
向かいの席に座っていたティトレイが、紅茶を啜りながら言った。
「え……3つ、ですか?」
アニーは目をぱちくりさせた。
こんなに美味しいのに、彼の口にはあわなかったのだろうか。
「ああ、3つだ。俺ならもっと美味く作れるぜ。それこそ5つ星にな!」
そう答え、アニーが食べおわったのを確認すると、ティトレイは席を立って手を差し出した。
「帰ろうぜ。5つ星のラズベリーパイ、作ってやるよ」
自信満々のティトレイに、アニーはくすりと笑った。
「じゃあお買い物して帰らなくちゃ、ですね」
「よっしゃ!行こうぜ!」
きっと彼が言うなら、この店のパイは3つ星で。
彼なら5つ星のパイを食べさせてくれるに違いない。
アニーはティトレイの手をとって店を出た。
2007/07/19
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