「どうしたの、ソレ」

彼女の手には“カメラ”。
とても高価なもので、普通の人間がそれを持つことはほとんどない。
そこそこの金持ちか、それを仕事にしている者くらいだろう。

そんなカメラを何故彼女が、という疑問がジャックを支配する。

「カイン様に貸していただいたのです。町の外に出るのなら、いろんな様子を撮ってきてほしいと頼まれたんですよ」

そうミランダは微笑んだ。
たびたび頼まれていたのか、彼女は慣れた手つきでカメラを構える。

「ジャックさん、笑ってください!」

ジャックは戸惑いながらもニカッと笑った。

カシャッ

シャッターを押した音。
レンズの下部分から紙が一枚でてくる。
ミランダはそれを軽く振り、ジャックに渡した。

「へ〜、スゲー!俺初めて写真とったよ!」
「今度はベストショットを狙いますからね」
「マジ?今日は一日気をぬけないな」

ジャックは苦笑し、ミランダも笑う。
二人をとりまく空気は温かく、穏やかで。


カシャッ

「ベストショット、ですね」

仲の良い二人を、少し離れたところから写真におさめるカインがいた。







―――――
何してんだ、カイン様。
カメラ……この世界にあるのか?


2007/07/14
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