「なんか……避けてませんか?」
「……そんなことないわ」
意外と鋭い彼女を相手にごまかすのは、骨のおれる作業だと思った。
「避けてますよ」
「………………」
「ほら」
普通では気づかれないように避けていても、彼女には通用しない。
認めるしかない。
「なんで、避けるんですか?」
彼女の肩が震える。
だがここで引き寄せてしまったら、今まで避けてきた意味がなくなってしまう。
「アタシはあなたにとって必要な人間じゃないから」
きっと彼女は認めないだろうけど。
「なんで決めつけるんですか!私にはスカーレルが必要なんです!」
予想どおりの答え。
でもそれは今だけだから。
「そう思い込んじゃってるだけよ。アタシはアナタみたいな純粋な人に必要とされるような人間じゃないわ」
この赤く染まった汚れた手を必要とするのは、同じように汚れた人間だけ。
「必要かどうかは私が決めることです!」
たとえそうだとしても。
「たとえアナタがアタシを必要としても……」
「………」
ごめんなさい、ごめんなさい。
心の中で何度も謝る。
でもこうするしかなかった。
彼女を再び幸せな世界に帰すには、傷つけるしか方法がないと思ったから。
本当は自分に彼女は必要だけれど、甘えてはいけないから。
ひどい男と思われようとも、むしろそれは本望。
次の言葉を放ってしまうと、きっと彼女を泣かせてしまうだろう。
そして自分はもうココには戻れない。
ああ、さようなら、楽しかった日々。
さようなら、愛しい人。
「アタシはアナタを必要としていないわ」
彼女の目から、ひとしずく。
―――――
表面スカ←アティ
内面スカ⇒←アティ
2007/07/04