確かにそこにあった。
造りかけの白い街の、自分の屋敷があった場所に、それのレプリカが。
完全な状態ではなかったけれど、間違いなくガイの住んでいた屋敷だった。

だが何か違和感を感じる。
レプリカとか、造りかけとか、そういうことではなく。

(……匂いが、ない)

料理人たちが腕によりをかけた料理の匂いが、
ペールや庭師たちが手塩をかけて育てた草花の匂いが、
ホドの人々が生活しているという匂いが、

思い出の匂いが、ない。


「残り香を複製するなんてできるはずがないんだ」

ガイが言うと、彼女は「そうね」と答えて、ただ泣きそうな顔をしていた。







―――――
さらに続きます。


2007/05/14
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