アフラーンの一族であるルウの肌の色は、たまに来る行商人やマグナたちと比べると黒い。
でも今隣を歩いている彼の肌は透けるように白い。
羨ましい、ということはないけれど、いつも見て綺麗だなとルウは思う。
「……なんだ?」
ずっと見ていたルウの視線にいたたまれなくなったのか、ついにイオスが口を開いた。
「イオスって、肌が白くて綺麗ね」
ルウは真面目な顔をして言う。
普段なら綺麗といわれてもあまり嬉しいものではないが、彼女の口から出ると何故か素直に受け入れることができた。
「僕はルウの黒めの肌も綺麗だと思うよ」
それは本当の思い。
ルウを形成する全てのものが綺麗だとイオスは思う。
肌はもちろん、長く黒い髪も、大きな目も、よく動く口も、そして心も。
すべてが美しい。
ほら、「ありがとう」とふんわり笑うその表情も、とても綺麗で、とても愛しい。
「人間っておもしろいわよね。肌の色ですら同じ人はいない。考えることだって、行動だって、全然違うもの。見ててすごくタメになるわ」
ルウは今まで人と関わってこなかったから、なおさら。
ルウの話を聞いてイオスは微笑む。
その柔らかな表情にルウも自然と頬が弛んだ。
「キミのその表情も皆とは違う。ルウ、今はキミに一番興味があるな」
彼女は天然たらしなのだろうか。
「じゃあ僕はルウの人間観察に付き合おう。一生を通してね」
意味を正しく理解したのだろうか。
ルウは顔を真っ赤に染め、弾けんばかりの笑顔をイオスに向けた。
2007/06/03