ザオ遺跡までまだ距離がある。
あたりはもちろん砂だらけで、影などまったくといっていいほどない。
照りつける太陽の光が遠慮なくジリジリと肌を焼いていく。
ナタリアはジェイドの、アニスはルークの影に入って歩く。
二人ともガイに気を遣っているのだろうが、アニスの場合は男性にしては背が低めのルークをからかうという目的の方が強いのかもしれない。
自分は軍人だからと遠慮してしまうティアには、素直に甘えられる彼女達が羨ましく思えた。
先程から頭がクラクラして、体力の消費も激しい。正直、辛いのだ。
頭に手をあててため息をついた。
フッと影が差す。
何だろうと目をやると、ティアの前をガイが歩いている。
先程まではルークやアニスと共に先頭を行っていたはずだ。
なのに何故一番後ろを歩いていた自分の前にいるのか。
答えはすぐに出た。
「俺の影を歩くといい」
自分を気遣ってくれる彼の優しさが身に染みる。
オアシスも海も遥か遠くだというのに。
ティアの耳にはたぷんと波の揺れる音が確かに聞こえた。
2007/04/24
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