腕の中には柔らかくて温かい彼女。
緋色の髪からは優しい香り。
「あ、あの、スカーレル。そろそろ離してください…」
「……………」
離れたくないから聞こえないフリ。
もぞもぞとする彼女の顔は真っ赤で、照れているだけだとわかる。
愛しい。
「スカーレル……離して…」
「聞こえない」
「聞こえてるじゃないですか」
「聞こえないわよ」
おかしな会話。それすらも楽しくて。
小さな彼女を抱き締める腕に、ぎゅっと力を込めた。
「大好きよ、アティ」
そう呟くと彼女はおとなしくなって。
「……聞こえません」
でもその耳は赤く染まっている。
そんな可愛い態度にクスクスと笑い、今度はよく聞こえるように耳元で呟いた。
2007/05/02
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