白を基調としており、荒廃というよりはまだ造りかけといった街。
それは間違いなく兄と彼の故郷であって、自分の故郷でもあったはずの街だ。
彼が小さい頃住んでいた屋敷も確かにあって、懐かしいはずなのに、素直にそう思えないのだろう複雑な表情をしていた彼に、何と声をかければいいのかティアにはわからなかった。
休憩の時、皆の所から少し離れた場所にいる彼に声をかけようか、迷って、迷って……
結局声はかけずに、静かに隣に立つことしかできなかった。
「レプリカは、かわりになんかなれないんだ」
彼が小さく呟く。
「ルークはルークだし、アッシュのかわりだなんて馬鹿げた考えさ。誰もそんな風にルークをみたことはない。そうだろう?」
「ええ、そうね」
彼が本当に言いたいのはルークのことではなく、次の言葉からだとなんとなくわかった。
「ここだって、あのレプリカたちだってそうだ。あれは姉上で、フリングス将軍で、イエモンさんで…ここはホドで……
でも違う。彼らに俺が求める共通の時間はないし、ここには思い出がない。姿形は確かに一緒だよ。でも………
……違うんだ」
「………ええ」
「レプリカの存在に甘えちゃいけない。かわりになんか、ならない……」
そう言い切ったときの彼の表情はわからなかったが、体は震えていた。
―――――
続きます。
2007/05/11