「いらっしゃいませー」
聞き慣れた声が慣れない場所で聞こえる。
「あれ、ティアじゃないか。バイトは終わったのかい?」
「ええ」
白銀の町・ケテルブルクのホテルの中にある酒場。そこでガイはバーテンダーのバイトをしている。
「成人に満たない女の子が一人でこんな所に来るもんじゃない」
心配して言ってくれているのはわかるが、子供扱いをされた気がして、ティアは唇を尖らせた。
「お酒を飲みにきたわけじゃないもの、平気よ。それに、貴方がいるじゃない」
絡まれたら助けてくれるでしょう?
そう言った意を含めると、ガイは目を細め、「お任せください」と笑んだ。
カラン、と音がして扉が開いた。入ってきたのは女性二人。
「いらっしゃいませ」
すかさずガイは笑顔で声をかける。
だいぶ女性にも慣れたのか、その笑顔は長い間行動を共にした仲間たちくらいでないとわからないほどにしか引きつっていない、ほんのわずか引きつった笑顔。
それがガイの営業スマイル。
彼の体質をよく知っているティアは、必死に笑顔を浮かべるガイを見て、なんだかおかしくなり笑った。
2007/05/24
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