こんなハプニング、本の中の人物だけが体験するものだと思っていた。
「きゃっ」
「わっ……と」
ちょうど部屋から出ようとした俺と、前を通っていたアメルがぶつかりそうになった。
そして結果的に抱き合うような形になってしまった。
「ごめん、アメル。大丈夫?」
「は、はい」
そして開け放たれた玄関の扉。
そこにある影は一番この状況を見てほしくなかった……
「ルウ!?」
「え?……わっ!ごめん!」
俺たちのこの体勢を見て誤解したのだろう。
顔を真っ赤にして外に飛び出してしまった。
他の誰よりもルウにだけは誤解されたくなかったので、とっさに俺は追い掛ける。
「ルウ!待って!」
俺の呼び掛けに振り返るルウは、バツの悪そうな顔をしている。
「ごめんね、邪魔しちゃって。でもキミたちも悪いんだからね。あんな所で抱き合ってたら、誰に見られてもおかしくないわよ」
ああ、完璧に誤解してる。
「違うんだよ、ルウ!」
「え?」
「あれはただ、ぶつかりそうになったはずみでああなっただけなんだよ!」
「そうなの?」
「そうだよ!」
「なんだ、じゃあルウの勘違いだったのね」
とりあえず誤解は解けたようで、俺はホッと息をついた。
「でもマグナ。なにもそんなに必死になって言い訳しなくても、ルウわかってるわよ?」
「え?」
「だって、キミたち好き合ってるんだから、おかしなことじゃないでしょう?大丈夫。ルウもみんなもわかってるから、隠す必要なんてないわよ」
ルウの根本的な誤解はちっとも解けていなかった。
2007/05/28