あれからいくつの眠れぬ夜を過ごしただろう。
大切な幼なじみを失い、
大切な婚約者を失い、
大切な仲間を失った、あの日から。
“彼”の姿を見たときは、不覚にも涙がこぼれそうになった。
心の底から沸き上がる熱は止めようがなかった。
たとえそれがどちらの“彼”であろうとも。
うれしい、と思った。
もう失いたくない、と思った。
いつまでも側にいてほしい、と思った。
「そう、アッシュはもう帰ってはこないのですね……」
ルークの帰還を祝したパーティーが行なわれる中、ナタリアは主役である彼をテラスに連れ出した。
どうしても知りたかった。
確認したかった。
本当にルークなのか。
アッシュは本当に戻ってこないのか。
「ああ……でもアイツは俺のなかにいるよ」
「……ええ、そうでしたわね」
ルークは低く一つにまとめた髪をなびかせ、優しく微笑む。
それを見てナタリアは、本当にルークは帰ってきたのだと安心し、その中にアッシュも感じた。
「……なあ、ナタリア。俺はお前の側にいていいのかな?」
「何をおっしゃるの、突然。いいにきまっているでしょう」
「でも、俺……」
「言ったでしょう?貴方は貴方。アッシュとは違うのです。貴方だって私の大切な幼なじみですわ。側にいないなんて、むしろ許しません」
たとえ貴方のなかにアッシュがあろうとも、彼に遠慮するなんてことしなくていいんですのよ。
真っすぐルークの目を見て諭すように付け加える。
「そのことはもうわかってるつもりだよ。……そうじゃなくて、さ。俺、ナタリアのこと好きだよ。もちろん幼なじみとしても。でもそれだけじゃたりないんだ。俺はお前を女としてみてる。だから……」
「ルーク……!私はもう貴方と彼を混合することはありませんわ。今の言葉は貴方の心からのものと思っていいんですのね?」
少し俯きがちになっていたルークがハッとして「もちろん!」と答えると、ナタリアは瞳を潤ませながらルークの胸に飛び込んだ。
「私も貴方が好きですわ。アッシュとは違う、貴方が。幼なじみとしても、殿方としても……」
じゃあ改めて聞くよ。
俺はナタリアの側にいていい?
もちろんですわ。
2006/12/31