中から外を窺うあの翼は、仲間であるセルファンのもの。
「何してんだよ、アロエリ」
「うわあああ!驚かすな!」
悪い、とつい謝るも、そこまで驚くこともないんじゃないか。
ここは俺の宿だよな?
そもそも何を見ているんだ?
「わ、ばか」
「セイロン?」
「……………!」
セイロンに何か用事があるのなら、さっさと出ていけばいいのに。
「礼を、言おうと思っただけだ。気を失っている間にストラをかけてくれたようだから」
「じゃあ早いとこ行けよ」
「うるさい!心の準備というものがだなぁ!」
「うるさいのはお前だ、アロエリ」
「!!?」
あ、セイロン。
まぁあんだけ大声出してりゃ気づくよな。
「で、我に何か用か?」
「い、いや、その、ストラをかけてくれたと聞いた。あ、ありがとう……」
「なあに。当然のことをしたまでよ。そなたは大事な仲間なのだから」
セイロンがいつものように尊大に笑うと、アロエリは真っ赤になって飛び去った。
なるほど、どうやら健康な体と引き換えに、心を奪われたようだ。
しかも種族の違う若君とやらに。
「身の程知らずの人魚姫ってとこか」
「何だ、それは?」
「いや、アイツの応援してやるか、って話」
「ふむ?まあ、あやつは店主殿に心開いている。仲良くしてやってくれ」
俺よりも、お前が構ってやらないと、泡になって消えちまうかもよ?
2012/4/2