ぐっすり眠っている貴方に、お疲れ様の意を込めて……





眠り姫にくちづけを





最近では「どんな依頼でも確実にこなす」と有名になったチーム・アハト。
隊長であるジャックの頑張りはもちろん、それを手伝う仲間たちの活躍だって街全体に届いている。
街の人間でジャックに頼まれて力を貸さない人物などほとんどいない。

そんな力と人望を持つとは思えないほどの幼い寝顔が、今ミランダの目の前にある。

(……かわいい)

こんな印象を持ったことを彼に伝えたら怒るだろうか。
それとも拗ねるだろうか。
少なくとも喜ぶなんてことはないだろうな、と思う。


起きる気配はない。

寝顔を見るのに飽きたわけではないけれど。

多忙な日常の中で、一緒にいられるこの時間。

折角だから起きている貴方と過ごしたい。

そう思うのは我侭でしょうか。



髪を撫でる。
起きない。

髪を少し引いてみる。
起きない。

頬を軽く叩く。
起きない。

頬をつねってみる。
起きない。



こうなると半ば意地になってしまって。
どうすれば起きるのか、考えた結果。



優しく口付ける。




「………ん……?」

ジャックの目が僅かに開いた。
まさか本当にこれで起きるなんて思わなかったミランダは、自分の顔に熱が集まるのがわかった。
でもそれを彼に悟られたくなくて。
少し意地悪な表情をして声を掛ける。

「おはようございます、眠り姫」

ジャックは目を擦りながら

「ミランダ?……俺、男なんだけど」

そう言う彼に微笑みながら

「でも私のキスで目を覚ましましたから」
「!?」

まだ寝ぼけていたジャックは、ミランダのそのセリフで完全に覚醒した。
顔が熱くなってきた。
自分の唇に手を当ててみる。


ここにミランダの唇が……


これ以上ないほどに顔を赤くしたジャックは、がっくり項垂れた。

まさか初めての愛しい人とのキスが相手からだなんて。
男が廃るというか何というか……
しかも寝込みを……


悶々と考えるジャックをよそに、ミランダはさも良いことを思いついたかのように手をぽんと叩いた。

「あ、じゃあ私は貴方の王子様ですね!」



俺が“姫”で

彼女が“王子”?

勿論そんなの納得いかない。



今度、彼女が寝ているときに同じことをしてやろう

そうジャックは意気込んだ。







2006/06/05
2010/09/26 修正
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