「すかー……」
暖かい日差しを受けながら、彼は本当に気持ち良さそうに眠っていました。
二人寄り添って
「あ、アヤ。ごくろうさま」
「あれ?ソルさんは?」
リプレに頼まれていた買い物をすませて帰ってきたアヤは、同じくリプレの手伝いとして居間の掃除をしていたはずのソルがいないことに気づいた。
「ソルなら掃除終わったからって散歩に出かけたわよ」
答えたリプレの手には沢山の乾いた洗濯物。
これらを一人でたたむにはかなり時間がかかり、何より疲れる。
「手伝います」
アヤはそう言って洗濯物を取ろうとした。
しかしリプレはそれを遮る。
「いいよいいよ。帰ってきたばかりなんだし、ゆっくりしてて」
「でも……」
「大丈夫。暇人が一人いるから」
「え……?」
「ガゼルー!」
「ああ……」
リプレはガゼルに対しては遠慮なくこき使う。
ぶつくさ言いながら手伝うガゼルを見て、アヤは苦笑した。
「リプレさん、私、自分のだけでもやります」
「そお?じゃあ、それが終わったら休んでね」
「はい。……あっ」
急に声をあげたアヤに驚き、リプレとガゼルは彼女の方を見た。
彼女の視線はガゼルの手元にそそがれている。
「……何だよ?」
ガゼルは手を止め、不思議そうにアヤを見る。
「いえ……ガゼルさん、手際いいなぁと思って」
「そりゃ、ほぼ毎日リプレにこき使われてるからな。嫌でも慣れちまう」
苦笑して言ったガゼルを、リプレは横目で睨んだ。
自分の洗濯物をたたみ終えたアヤは、家にいてもする事がないので散歩ついでにソルを探すことにした。
と言っても、ほぼ見当はついている。
(あ、やっぱり)
彼のお気に入りの場所であるアルク川。
ソルは最近よくここで昼寝をしている。
そして今日もやはり同じ。
アヤはソルを起こさないように、静かに側まで行き、隣に座った。
(ふふっ、かわいい)
彼の無防備な寝顔を見ていると、無性に触れたくなる。
顔に少しかかっているソルの前髪をよけてみた。
(温かい……)
アヤは調子に乗ってソルの頬に触れようとする。
「ん……アヤ……?」
不意に名前を呼ばれて、心臓が飛び出るかと思った。
「あ、すみません。起こしちゃいましたね」
触れようとしたのを悟られないように素早く手を引っ込め、何でもないように微笑む。
しかし、アヤの顔はほのかに赤くなっていた。
「いや、いいけど……何赤くなってんだ?」
「え?赤いですか!?」
アヤは両手で頬をおさえた。
「き、きっと日差しが暖かいからですよ!」
「あ〜、そういやちょっと暑くなってきたかも。帰ろうか」
そう言って立ち上がったソルは、アヤに手を差しのべた。
アヤはその手を取ったが、立とうとはしない。
「ん?どうした?」
ソルは首を傾げた。
アヤの顔を覗きこもうとしゃがんで見ると、彼女の顔は先ほどよりずっと赤く染まっていて。
「大丈夫か?」
しかし返事はなく。
ソルが困っていると、アヤは本当に小さな声で言った。
「もう少し……二人でいたい……」
「おいおい、いつまで寝てる気だ?こいつら」
「いいじゃない。こんなに良い天気だもの」
帰りが遅いアヤとソルを迎えに来た二人。
ガゼルは呆れ、リプレは微笑んだ。
彼等の視線の先には、穏やかな表情で寄り添って眠る二人がいた。
「そっとしとこう。あ、ガゼル。帰ったら薪割りお願いね」
「げっ」
2010/09/26 加筆修正