一杯、二杯、三杯目をいれるか迷って、やめておいた。
くるくると銀のスプーンでかき混ぜて、一口味見。
(うん、今日はこれでいいかな)
ふわりと漂う紅茶の香りに、ルウは笑みを深くした。
ノンシュガータイム
生クリームがたっぷりのケーキには、いつもより少しだけ甘みを抑えたくらいがちょうどいい。
いくら甘党だからっていつでもお砂糖たっぷりなわけじゃないのよ、誰に言うでもなくフフンと胸を張る。
早くふわふわのスポンジにフォークをいれたい。
うきうき、そわそわ。
ケーキのことを考えるだけで胸は甘くいっぱいになる。
「これからお茶会か?」
クスクスと笑いを含んだその声は、ケーキとはまた違った甘さをルウの胸に広げた。
「うん!イオスもどう?」
「紅茶だけ貰おう」
ポットに残っていた紅いお茶を、新しく棚から出したカップに注ぐ。
「お砂糖は?」
「いや、いらない」
「えっ!?」
イオスは自分ほど甘党というわけではないから一杯かな、と考えていたルウは、声が出るほど驚いた。
ルウとて、ただお茶を楽しみたいだけの時は砂糖を入れない時もある。
イオスが入れたり入れなかったりすることも知っていた。
それなのに当たり前のように砂糖を入れようとして、いらないと言われたことに驚いたのは、今の甘い空気に酔っていたからかもしれない。
「ルウと一緒に飲むだけで、十分甘く感じるからね」
ケーキなんて足下にも及ばない甘い笑み。
(ああ、ルウももう一杯減らしておけばよかったかな)
2010/04/20