灰色の雲から降ってくる結晶は、人気の少ない街を真っ白に染め、吐く息が目に見えるくらいに温度を冷却させている。

外では総司と子どもたちが雪だるまを作ったりして遊んでいた。
それを見て仲間に入りたいと思うのは、自分にもまだ童心が残っている証拠だと新八は思う。
しかし寒がりな彼は、決してその場から動こうとはしない。


「総司ー。いい加減にしないと風邪引くぞー?」

かれこれ二時間は雪まみれになって遊んでいる総司に声を掛けてみるが、

「永倉さんも一緒に遊びましょうよー。楽しいですよ?」

と聞く耳もたず。
今日は総司の体調も良いらしいが、最近は部屋にいることが多くなったことから、油断は禁物だ。
雪が積もって、どうしてもと言うものだから、何故か新八が土方と山崎に必死に頭を下げて外出許可を得たのだ。
これで風邪を引かれてしまったら、彼らからどんなお叱りが降りかかってくるやら。

想像しただけで恐ろしい。





「で、結局怒られる羽目になるわけね…」

総司の寝ている側で項垂れている新八。それを総司は申し訳なさそうに苦笑して見ていた。

「すみません」
「あ〜、うん。もういいよ。過ぎたことだし」

何より総司のあんなに楽しそうな姿は久しぶりに見た気がする。
いつも行動を制限され、今まで活発に動き回っていた彼にとっては辛い生活だったのだろう。
新撰組の仕事だってほとんど新八や他の副長助勤が変わりにしていることが多い。
体を動かしたのは本当に久しぶりだったのだ。

「でもやっぱ昨日のは少しはしゃぎ過ぎ。次からは気をつけてよネ」

新八は軽く溜息をついて、総司を見た。
苦笑しているだろうと思った彼の表情は、しかし何処か寂しげで。
新八は何か嫌な予感を感じた。

「総司?」
「…次は、無いでしょうから」

きっと次は、自分はこの世から消えているだろうから。

「弱気だね」
「相手は病気ですからね。斬ることもできない」
「お前らしくないんじゃない?」
「これが本当の私ですよ」

本当は恐くて恐くてしょうがない。

「じゃあ大人しく死ぬつもりなんだ?足掻きもしないで」
「………」
「ちょっと見損なったよ」

そう言って新八は部屋から出て行った。
残された総司は天井を見つめ、大きく息をついた。

「私はいつからこんな弱虫になってしまったんですかねぇ…」

本当は生きたいくせに。
新撰組の皆と共に戦いたいくせに。
“誠”の誇りを背負いたいくせに。

「駄目だなぁ…。皆に迷惑かけてばっかりだ」

襖の向こうに未だある気配に語りかけるように総司は呟いた。
その気配の持ち主はしばらくの沈黙のあと総司に言い聞かせるように答えた。

「あのさぁ、お前はもっと俺らを頼っていいのよ?総司が調子悪いときは俺らがお前の分の穴を埋めるし、お前が復活した後その分取り返せばいい。何のために仲間がいんのさ。お互いを助け合うためだろ?」
「………!」
「なんてさ、俺も偉そうなこと言えないけどネ」
「そうですよね。永倉さんだってこの間熱あるのに巡察行って倒れかけたらしいし」

仲間を頼ってなかった証拠ですよね?と総司は笑う。

「げっ。何で総司がそのこと知ってんのヨ」
「藤堂さんが教えてくれました♪」
「あいつは〜〜〜!」




ま、話を戻すけどサ。
仲間がいるって幸せなことだと思わない?
頼って、頼られて。
不十分なところを補い合ったりして。
俺もたぶん、総司や皆がいなかったら今生きてなかったかもしんないし。

だから、気にせずに今はゆっくり寝とけばいいんだよ。
で、早く元気になって俺らを楽させてくれよ。
いや、今のは冗談ね。

頼りっきりじゃなくて、頼られっぱなしじゃなくて。

一緒に戦って生こうぜ?







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10000番キリリクで闇猫様へ捧げます。

2005/10/15
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