※オリキャラ注意







息は荒く、急いで進める足にも限界が近づいている。

「おいおい、逃げんなよ姉ちゃん」

後ろからあきらかに悪そうな男たちが追ってきている。

(逃げんなって言う方が無茶だ!)

そう思いつつもだんだんとスピードが落ちていく。
ついには足がもつれてこけてしまった。

「やっと追いついたぜ〜」

男はにやにやしながら近づいてくる。
夢中で走っていたので気づかなかったが、裏通りに入ってきてしまったらしい。人通りはないに等しい。

(もう駄目……!)

目をぎゅっと瞑り、体を強張らせる。



「女ひとりによってたかって、恥ずかしくないのかぃ?」


え?と思って目を開けたら、自分の前には刀を構えた浪人風の男。

「何だ、テメエは!?」
「通りすがりの浪人さ」
「邪魔しないでもらおうか」
「出てきちまった手前、もう引っ込めねぇな」

追いかけてきた男たちはチッと舌打ちし、刀を抜いた。

「なら力ずくといこうじゃねぇか」

男たちの行動を見て、浪人はニャッと笑った。

(正体を知らないとはいえ、俺に挑もうたぁ根性すわってるねぇ)





何が起こった?
目の前には浪人の愛嬌のある笑い顔。
彼の周りには倒れた男たち。確か自分を追っていたのではなかったろうか?
そして差し出されている浪人の手。刀はいつのまにか鞘にしまわれていた。

「大丈夫かい?」
「は、はい」

手をとり、体を起こす。

「最近ますます物騒だからな。気ぃつけて帰んなよ」

そう言って背を向けた浪人を見て、呆けていた自分に気がつき慌てて呼び止めた。

「あ、あの……助けてくださってありがとうございました!あの……私は「待った」

名乗ろうとした瞬間、浪人に止められる。

「名乗る必要はねぇ。俺も名乗れるような名は生憎持ち合わせてないんでね」

そして浪人は再び背を向け、「じゃ」と手を振って去って行った。





夕日が沈もうとしている。
どれくらいそこにいたのか。
彼はもうとっくに去って行ってしまった。
此処に入る必要はもうない。
早く帰らないと、おかみさん怒るかな。
もう少しここにいたいけど、足を動かした。
また明日ここに来たら彼に会えるかな……?


名も知らぬ彼に会えることを祈りながら、家に帰っていった。







2005/06/13
2010/09/26 修正

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