パチパチと焚き火の音がする。
いつのまに眠ってしまったのだろうか。





はじまりの夜





重たい目蓋をゆっくりと開ける。
魔物避けに焚かれた火の明かりが眩しくて、ちゃんと目を開けるのに時間がかかった。
僅かに体を動かすと、体に覚えのない布がかけられているのに気づく。

「目が覚めたのか」

聞き慣れないその声に驚いたが、すぐに声の主に思い当たった。
日が暮れる前に出会ったフェリオという青年。
敵か味方かわからない。
警戒しておくに越したことはない。
だから出来るだけ寝ないで見張っていようと思っていたのに。

(いつのまに寝てしまっていたのかしら)

風は静かに体を起こして、声の方に目をやった。
深い緑の髪が火の光を受けて、幻想的な印象を風に与えた。

「お眠りにならないのですか?」
「見張りをたてずに全員で寝てどうするんだ」

フェリオは軽く笑って座りなおした。火に軽く手をあてる。
風も少し寒さを感じたので、火の側によった。

「寒いか?」
「ええ、少し」

それ以上話は弾まなかった。
もともと話すのが得意な方ではないし、住む世界が違う人間と話をあわせれる自信がない。



「そんなに警戒しなくても、とって食ったりしないぞ」
「………!」

風が驚いてフェリオを見ると、フェリオは苦く笑っていた。

「そりゃ見ず知らずの男と一晩過ごすのは、信用できないだろうけどな。休んでおかないと明日辛いぞ」

言いたいことはわかる。
旅慣れていない自分達に一番必要なのは、しっかり休憩をとることだ。
幸い見張り役を買って出てくれる人もいるのだから、今のうちに体を休めておくべきだろう。

少しずれた布を肩にかけなおす。
ふと、この布は彼がかけてくれたのだと理解した。

「……もう少し温まったら休みますわ」
「ふぅん?」

なんだかまだ寝たくない。
彼を警戒するのとは別に、どこかでそう願っている自分がいた。

“フェリオ”という人間を、もう少し感じてみたいと思ってしまった。







2007/10/28
2008/03/02 加筆修正
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