黒くて苦いコーヒー

飲めない人にはこちらをどうぞ





カフェ・オ・レ





「何を飲んでいるの?」

広間でちょっと一息ついていたところにルウがやってきた。
先ほど玄関近くでマグナと話していたのを見かけたが、終わったのだろう。
手に何か小さな箱を持っている。

「コーヒーだよ」

イオスはそう答えてから、ルウに「それは何だ?」と問う。

「さっきマグナにもらったの。クッキーだって」

胸がチリッと痛んだ。
まったく、なんて無邪気なんだろう。
もちろん、そこが彼女の良い所とわかってはいるけれど。

しかしその僅かな痛みは、ルウの「一緒に食べよう?」という言葉で治まった。
男にもらったものを他の男と食べるのは、くれた男に気持ちがない証拠だ。
少なくとも恋愛感情はもっていないだろう。



イオスにはコーヒーがあるので、ルウは自分の分の紅茶を入れることにした。
そしてふと思う。

「コーヒーって美味しいの?」

飲んだことないのかと聞くと、本の中でしか知らないわと答えられた。

「飲んでみる?」

ルウは差し出されたカップを受け取り、恐る恐る口をつける。

「………っ!にが〜いっ!」

ルウは顔をくしゃくしゃにして叫んだ。
イオスは「そうだろうね」と苦笑する。

「よくこんな苦いの飲めるわね」
「今日はたまたま……だよ」

そう、本当にたまたまだった。
彼女が彼といるところを見てしまったから。
なんかむしゃくしゃして。
だから普段と違うことをして気を紛らわせようとした。
それだけ。

「ルウには飲めないよ」

そう言ってルウはカップをイオスに返した。
甘党であるルウにこれはきつかったか。

「じゃあこれならどうかな」

イオスはコーヒーの中に砂糖を一杯、二杯と入れ、ミルクも適量入れる。
スプーンで混ぜると黒から茶色へとかわっていった。
ルウはそれを不思議そうに見つめる。

「飲んでみて」

ルウは少し嫌そうに、それでも砂糖が入ったのだから甘くなっているかも、と期待を込めてカップを持った。
こくり。
少し飲んで、「あっ」と声が出た。
「どうだ?」とイオスが微笑んで問う。

「とっても美味しい!」

ルウははじけんばかりの笑顔を見せた。

「とても優しい味。ミルクと砂糖を入れたら、こんなにも違うのね」

クセになりそう。
そう言ってルウはもう一口飲んだ。

「あ、でもこれ、イオスは何も入れずに飲んでたのよね?ごめんね、ルウのために……」

しゅんとしたルウに、そんなこと気にするな、とイオスは笑う。

「僕だって普段はそれを飲んでいるんだ。さっきもたまたまって言ったろう?」

優しい声と笑顔。
温かい手で頭を撫でられ、ルウはくすぐったそうに笑んだ。



君といる時間は、
やさしい味のカフェ・オ・レでまったりすごそう







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ウチのルウちゃんは紅茶派。
イオス君は両方好みます。

2007/09/22
2010/09/26 修正

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