二人で繁華街を歩く。
人の波にさらわれないように、お互いの手をしっかりと握って。
ゆっくり、ゆっくり。





 ぱ ふ ぇ





「あ……」

ふとルウは歩みを止めた。
イオスもそれに続く。

「どうした?」

不思議に思ったイオスの問いにも答えず、ルウが一目散に向かったのは、若い女性がたくさん入っている、とある店。
女性たちはクリームやアイスなどが重ねられ、フルーツがのっていたりチョコがかけられたりするものを食べながら、キャイキャイとお喋りに夢中になっている。

「食べたいのか?パフェ」
「ぱふぇ……?」

後ろからの問い掛けの中に含まれた聞き慣れない単語に、ルウは首を傾げた。
見るからに甘そうで、そしてルウの好物になること間違いないであろう『ぱふぇ』。

「食べてみたいなぁ……。でもルウ、今日お金あんまり持ってないの……」

残念としょぼくれた顔をして、だがイオスに気をつかわせるわけにはいかないと、すぐに笑顔に戻る。

「あ、ごめんね止まっちゃって。行こう」

再びイオスの手を取り、ルウは店から離れようとする。
しかし歩きだしたとたん、クンッと引っ張られた。

「待って、ルウ」
「どうしたの?」
「店に入ろう。パフェくらいなら僕が奢る」

イオスはルウの手を引いて店に入ろうとする。
しかしルウはその言葉に慌てた。

「い、いいよイオス!ルウ、そこまで食べたいわけじゃないし!」

本当はものすごく食べたいけれども。
そんなルウの本音をイオスはお見通しで、「いいから、無理をするな」と微笑んだ。

「それに、僕も久しぶりに食べたくなった。一緒に食べよう」

そう言われてしまっては断る方が失礼だ。
ルウはおとなしく奢ってもらうことにした。

「わかったわ。そこまで言うなら一緒に食べてあげる」

言ってから後悔した。
なんて可愛くないことを言うのか。
渋面のルウに、しかしイオスは軽く吹き出した。

「君はすぐ顔に出るな」

その言葉にルウの顔はピンク色に染まる。

「ルウ、そんなにわかりやすいかなぁ?」
「ああ、素直な証拠さ」
「そう?」
「特に甘いものを食べる時はすごく幸せそうだな」
「うん、すっごく幸せよ!」
「僕はその時のルウが一番好きかもな」

もちろん、どんな時でも好きだけど。
そう付け加え、イオスは繋いだ手にぎゅっと力を込めた。

「……イオスって、けっこう気障なんだね」

それが照れ隠しからくる言葉だというのは真っ赤なルウの顔を見ればわかる。
そんな彼女がとても愛しくて。
「そうかな」と答えて、再び笑った。







2007/05/07
2010/09/26 加筆修正

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