君のにっこにこを見せてよ!
SMILEY
平和に向けて頑張るとはいえ、休みなしでは正直辛いものがあって。
だから街に着いたら一日は必ず、それぞれ自由な時間を過ごすと決めたのはかの砂漠王。
みんな異論はなかったので、今日は休日。
休みの日はたいてい大好きな絵を描いて過ごすリルムは、やはり今日も絵を描こうと思い、用具一式を持って街を歩いていた。
「リルム〜」
少し離れたところから誰かに呼ばれてリルムが振り返ると、花畑の中にいるガウとセリスを見つけた。
「セリス、ガウちゃん。何してるの?」
「冠作る!」
そう答えたガウの手元には作りかけの花冠。
セリスに作り方を教えてもらっていたらしい。彼女の手にはすでに出来上がった花冠がある。
「ガウがね、ここの花を見て、リルムに見せてあげたいって言ったの。でも何処にいるかわからなかったから、花冠にして見せてあげようって」
セリスが言った。
ガウはにこにことリルムに花冠を見せている。
ガウがまさか自分のために作っていたとは思わなかったリルムは、一時きょとんとした顔をしていたが、ガウの笑顔を見ると体の中から何か温かいものが生まれた気がして、顔を赤らめた。
「ガウ、出来たらリルムにあげる」
「……うん!ありがと、ガウちゃん」
じゃあリルムは花冠作ってるガウちゃんを描いてあげるね、とガウの側に座った。
「あら……私お邪魔かしら」
セリスは微笑んで花畑から離れた。
*
一緒に街を歩いていたガウはリルムとデート。
自分が邪魔者だと感じたセリスはその場から離れて一人で歩くことにした。
世界崩壊は起こったものの、街はすでに活気を取り戻している場所もあって、一人でまわっていても飽きることはない。
(あ、綺麗……)
たまたま目がいった露店のアクセサリー。
吸い込まれそうな深い蒼のペンダント。
「セリス?」
「ひゃっ!?」
ペンダントに見惚れていたセリスは、すぐ背後から声を掛けられ身を竦めた。
咄嗟に振り返ると、立っていたのはロックだった。
ほっと一息つき、再びアクセサリーに目を向ける。
「その蒼いの綺麗だな。セリスみたいだ」
「何言うの。でも本当に綺麗よね」
「買ってやろうか」
「え?」
盗むんじゃなくて?と少し笑いながら問い掛けたセリスに拗ねた顔をするロック。
冗談よ、とセリスは笑った。
「せっかく俺が買ってやるって言ってるんだから素直に受け取れよな」
「ふふっ、ごめんなさい。でもいいわ。高いし」
遠慮するなよ、とセリスの意見を無視してペンダントを購入するロックにセリスは呆れた顔をした。
「そんな顔するなよ。ほら」
「……こんな高いもの買うより、他に旅に役立つものを買ったほうがよかったのに」
そんな彼女の反応が気に入らなかったのか、ロックは少しむっとした。
「お前に喜んでほしかったんだよ」
ぼそりと呟いたので周りには聞こえなかっただろうが、セリスにはちゃんと届いていた。
照れた感じの声と、それに込められた気持ち。
「バカね。貴方がいてくれるだけで私は嬉しいのに」
その言葉とともに浮かんだ彼女の笑顔はとても美しくて、一生忘れまい、忘れるわけがないとロックは思った。
2005/12/02
2010/09/26 加筆修正