合宿に、参加したくなかった。
氷帝の人達に会いたくなかった。

だから国光に言って、合宿の参加を取り消しにした。


何で逃げたんだろう。なんて無様なんだろう。
自室のベッドの上で寝返りを打ち自己嫌悪に陥る。


その時家の電話が鳴り響いた。
家には誰もいない。居留守を使って私は電話に出なかった。

しかし、電話が留守電に切り替わって切れた後も、かかってきた。


ヤケになって電話に出ると、聞こえた懐かしい声。


《紗江か?》


景吾だった。
何で彼が電話をかけてきたのだろう。私が転校してから、一度も氷帝の人とは連絡を取っていなかったから。


《元気か?青学のマネージャーしてるらしいな。》

「うん、よく知ってるね。この電話番号も」

《俺様を誰だと思ってんだよ》


私は転校すると同時に、引っ越した。
だからこの家の番号は誰も知るはずがないのだ。

しかし景吾の自信満々の声を聞いたら、なんだか納得してしまった。


「何の用?わざわざ電話なんてして」

《合宿、来てくれ。》

「…どうして?私、氷帝の皆にはもう会えないよ…。」


どんな顔をして会えばいい?
皆優しいからきっと会ったら出迎えてくれる。志帆ちゃんだってきっとそうだ。

でも、その優しさがつらい。皆には会えないなんて、私のわがままだ。



「志帆ちゃんに…会えない……」

《………志帆が嵌められた》

「え…?」



嵌められたって…。今彼女はいじめられてるってこと?
誰が味方?青学の皆は敵なの?味方なの?
怪我は?してるの、してないの?



《立海のマネージャーにな。そいつは志帆にすべての仕事を押し付けてる。
この暑さで俺たちは休憩時間が多いし、その度に走り回ってあいつももう限界だ。
………紗江、来てくれないか?
俺達じゃ志帆を暴力からは守れても、あいつの負担自体を軽くしてやることが出来ない。》


「………志帆の味方は?青学の皆はどっちを信じたの?」

《桃城、海堂は味方だ。他はおそらく…》

「そう。二人は志帆ちゃんの味方なんだね…」



他の皆は立海の方を信じたんだ…。
私にできる事…。志帆ちゃんが私にしてくれた事の恩返しをしたい。

青学で、本当の仲間を作れた。
私がずっと欲していたもの。


志帆ちゃんだって、仲間。私の大切な後輩。


助けたい。




「景吾、場所はどこ?」










あの後景吾が手配した車が家に来た。
荷物を持って私はその車に乗る。

心臓が破裂しそうなくらい鼓動を打っていた。








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