『いらっしゃいませ!!』
文化祭当日。
私は仮装喫茶のシフトが入っていた。
昨日から国光が全然口を聞いてくれない。
何かをした覚えが何もないんだけど、国光から放たれているあのオーラのせいで、何だか近寄れない。
「可愛いじゃないか、赤頭巾。」
『不二君は王子様なんだね!!ピッタリ!!』
私の格好は、赤頭巾ちゃん。
よかった、変なのじゃなくて。
猫耳とか、メイドとかね。
着てる人いるけど。
そして不二君は王子様。
似合いすぎてて怖い。
「きゃっ!!」
ガシャンという、ガラスの割れる音とともに聞こえた悲鳴。
その悲鳴を上げたのはうちのクラスの女の子で、その女の子はお客さんとみられる男の人に腕を掴まれていた。
「シャツに掛かったんだけど、超冷てぇ」
「ご、ごめんなさい…っ」
「謝りゃいいってもんじゃねぇだろ。着いて来いよ。」
「嫌っ!!!」
「名前ちゃんどうしよう…」
『うーん…』
私の隣でその光景を見ていた友達が話しかけてきた。
どうやらさっきのガラスの音は注文していた飲み物を落としてしまった音で、しかもそれがお客様に掛かってしまった訳だ。
そのお客さんは女の子を無理矢理連れて行こうとしていた。
それはいただけないな…
「さっきちょっと見えたんだけど、あのお客さん、あの子の足引っ掛けてたんだ。」
『…意図的に転ばせたんだ。』
ちょっとムカプンきたので、私はその人たちに近づく。
『ご注文はお決まりでしょうか?お客様。』
「あぁ?何だお前」
『仮装喫茶の店員です。その子の腕を放していただけますか?』
「名前ちゃん…」
「コイツが客に向かって飲み物ぶっ掛けてきたんだろうが!!んだよ、俺たちが悪いって言いたいのか!!?」
『まさか。わざと足引っ掛けて転ばせやがったくせに女の子責めやがって小さい男とか思ってないですよ?』
後ろで不二君が吹いた。
「喧嘩売ってんのかよ!!」
『仮装喫茶ではその様なものは販売しておりませんが?』
「てめぇ!!」
『その子の腕を離して下さい』
「離すかよ。連れてって俺達のストレス発散してもらうんだからな」
やっぱりね、そんな汚いことすると思ったよ。
本当にそういう奴って許せない。
『そんな事したいんだったら、もっと他のお店に行って下さいよ。ここはそういうお店ではないので。お帰りください。他のお客様のご迷惑になりますから。』
「ぶっ殺す………!!!」
私の言葉が逆鱗に触れたのか男の一人が殴りかかってきた。
その時、私とその人の間に誰かが立ちふさがった。
「コイツに手を出すのは、やめろ」
「何だお前」
『国光!!!』
「本当に、君たち帰ってくれないかな?
さっき名前が言ったけど、君達のストレス発散する場所はここじゃない。
渋谷にでも銀座にでも行きなよ。
これ以上君たちがここにいると、僕のストレスが爆発しちゃいそうだからね(黒)」
不二君怖っ!!
一気に青ざめてどっかいったよあの人達!!
「名前」
『何?くにみ、うわぁ!!』
「不二、名前借りるぞ」
「クスッ、了解」
何故か国光は、私を抱えてお店を出た。
いやいや何で?
向かった先はテニス部の部室。
何でこんなところに?
「あまり無茶するな。心臓が口から飛び出るかと思ったぞ。」
『ごめんなさい……』
国光が怒ってる。当然だろうけど。
てか、話せた…
「あまり不二にも近づくな」
『不二君?何で?』
「………不安、なんだ。
お前が不二に取られてしまうんじゃないかと。それに、イライラする。お前達二人が喋っているのを見ると無性に腹がたつんだ。」
『それって…』
お母さんに甘える子供のように、国光は私に抱きつく。なんか駄々っ子みたい。
そんな国光が急に愛しく思えて、言おうとした言葉の続きを私は飲み込んだ。
国光は、気付いてるかな?
『国光シフトは?』
「………。」
『生徒会長が仕事サボっていいの?』
「仕事よりお前の方が優先だ。」
『もう…。』
駄目だ。びくともしない。
でも嬉しいから何も言わないけど。
『このまま二人でサボっちゃおうか、国光』
「あぁ。」
文化祭の一日目は、国光とテニス部の部室でシフトの仕事もせずにサボり。
そして二日目、一緒に出し物を見て回った。
まるでデートみたいで本当に楽しかった。
そして更に私は国光が好きになった。
青い春に学ぶ
(これが“嫉妬”か…)
(手塚国光は青い春に“嫉妬”という感情を学んだ。)
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奏蘭様リクエストの手塚でした!!
遅くなって申し訳ないです!!
では、リクエスト下さった奏蘭様!!
ありがとうございました!!
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