いつも静かな神社は人でいっぱいだった。
俺は名前の側を離れないように、だけど近づき過ぎないように。
そんな距離を保っていた。

名前は屋台で買った綿飴を食べている。


『虎次郎も食べる?』

「ありがとう、貰うよ
あんまり食べてると太るよ?」

『やかましい!!』


そう言って綿飴を口に運ぶ名前。
名前はもう少し太っても良いくらいだ。
俺が掴んだら折れそうなくらい細い腕してるんだから。


『楽しいね、虎次郎』

「そうだな」



笑った名前を見てたら気持ちが暴れそうで俺は少し名前から目を離して遠くを見た。

それがいけなかった。


「名前…?」




振り向くと名前がいない。
あぁ、何で目を離したんだ俺…!!!

急いで今来た道を戻る。
そんなに離れていない筈何だけど名前の姿が見当たらない。


「名前っ!!!」

思いっきり名前を呼ぶ。
返事はない。

この雑音で聞こえないのか?
頼む、少しだけ静かにしてくれ!!!


「名前ーーっ!!!」

『こじろ…』


足元で俺を呼ぶ声がした。
ズボンの裾を引っ張られる感触とともに。


足元を見ると、名前がうずくまっていた。



「何してるんだこんな所で!!!」

『ごめん…』

「立てるか?」

『うん…』


名前を立たせて、近くのベンチまで連れて行き、腰掛けさせた。


「どうした?」

『鼻緒が…』

「鼻緒…?」


名前の足を見たら、履きなれていない草履を履いたせいで、靴擦れを起こしていた。
血が滲んで鼻緒が少し赤くなっていた。

これの所為であんな所で蹲ってたのか…



「痛いか?」

『ううん、大丈夫』

「馬鹿、嘘つくなよ」

『馬鹿って…』



花火が上がるまであとい十分程度。
これ以上名前を歩かせるのは可哀想だ。


俺は名前の前に座る。


「ほら」

『え、何?』

「おんぶ」

『良いよ!!歩けるから!!』

「そんな足で同どうやって歩くんだよ馬鹿名前」

『また馬鹿って……』


名前は渋々俺の背中に乗った。
俺は立ち上がって家の方向に歩き出した。


『重くない?』

「重い」

『………』

「嘘だよ」



俺の背中で名前が怒る。
その姿がなんとも面白くて笑う。


『さっき虎次郎、すごい顔してたよ』

「さっき?」

『あたしを探してたとき。
今まで見たことないような顔してた』


あぁ…。
あの時は名前がいなくなってホントに驚いて焦ってたから…


そんなに変な顔してたのか俺は…



『虎次郎』

「何?」

『好き』

「え…?」



耳を疑った。
好き…って言ったよな…


「ホントに?」

『本当に』

「嘘じゃないよな」

『嘘じゃないよ。返事は?』









「俺も好きだ」




そう言った瞬間、花火が上がった。
何発も、何発も…


『きれいだね』

「そうだな」



俺と名前は花火を見ながら家に帰った。



花火


(浴衣、可愛いよ)
(あ、ありがと……)




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みお様リクエストのサエでした!!!
遅くなって大変申し訳ありません!!!!!

リクエスト下さったみお様!!
本当にありがとうございました!!!!

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