『テニス部ってこんなに遠いの?』
「ううん、遠回りという名の近道をしてるんだよ」
『何やねんソレ』
案内してくれるという長太郎について行ってから歩き詰め。
テニスコートってこんなに遠いっけ…?
「普通の行き方すると、ファンクラブに囲まれるんだ。」
『ああ、なるほど……。
あっ、いた…侑兄ーーー!!!』
前方に侑兄を発見したので思いっきり叫んだ。
侑兄のところまで歩くの面倒だし。
「何ねん名前〜、俺に会いに来てくれたんか?」
『いや、届け物。
オカンに頼まれとったんやけど遅くなってしもた。
ハイ、筆箱』
「…………。はよ渡してやぁ…
今日一日大変やったんやで?
跡部は貸してくれへんし…」
『あぁ、やっぱり…』
そんなこったろうと思った。
『じゃ、帰るかr「危ない!!」……え?』
侑兄から離れて、コートを出ようとした瞬間、長太郎が私に向かって叫んだ。
その声の方を振り返ると、黄色いボールが自分に向かって飛んでくる。
(……っ、避けられへん………っ!!)
そう思って目を瞑って衝撃を待った。
しかし、しばらくしても衝撃がこない
そっと目を開けると、視界は真っ暗
「大丈夫か、名前」
『ゆ、に……』
侑兄に抱きしめられていた。
衝撃がこなかったのは、侑兄にボールがあたったから…?
『……っ侑兄!!怪我は?痛いところはない!!?』
「何やねん珍しいなぁ…」
そう言って私の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
侑兄にあたったボールはコートの向こうに転がっていた。
『何カッコつけてんねん!!』
「せやかて、格好つけんと名前が泣いてまうやろ?」
『………っ』
さすが兄貴
よくわかってる…。
「泣いてええんやで?」
その言葉で完全に泣き出した私の背中を侑兄はずっとさすってくれていた。
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