予言してあげようか。
「………」
「どうしたの春樹」
「萩…」
「いい加減ノート取らないと黒板消されるよ?」
「えっ、本当だ…ごめん。夏美の事が気になって…。駄目だな私。妹達の事考えるとすぐ手元がお留守になる」
「別にいいじゃない。長女なんだし。」
長女は関係ないだろ、と彼女はやっと笑った。
夏美の傍には跡部がいるみたいだから、きっと大丈夫だろうと俺は思ってる。
「滝…私ね、一回だけ本当に殺してやりたい奴がいたんだ。もちろん殺したりはしなかったんだけど、病院送りにするくらいにはボコボコにしたと思う。あんまり覚えてないんだ。
ただ、そいつを殴って蹴ってどうしようもない怒りをぶつけて、汚い言葉で罵った。何度もそいつがごめんなさいって謝るのを聞きながら私はただただそいつをこの世から抹消したいって思ってた。
でも、そんな事したって夏美が喜ぶわけじゃないのに…。自分の感情だけで動いた。
もう謝れないから。思い出させたくないから。萩に懺悔しました。以上」
一気に喋って黙々とノートを書き始めた春樹を眺める。
俺には一体何を言ってるのか分からないけど、でもきっと彼女なりのけじめなんだろう。
夏美と跡部はどうしてるだろうか。
俺が知る限り、跡部をあそこまで夢中にさせた女の子っていうのは初めてだろう。
自分から求めて、自分から接点を作って。
ここ最近の跡部は、俺達が知らない奴みたいだった。
見た事もない行動ばっかしてた。
もちろん夏美も。
顔は常に真っ青で、それに伴って春樹達も元気がなくて。
でも俺はちょっと予言しようと思うんだ。
きっと近いうちに跡部と夏美は二人で部活に来る。
きっと今までのやり取りでは目には見えないけれど、想像もつかないほど大きな何かで繋がって、二人は俺達の元に来る。
春樹はきっとものすごくほっとするんだろう。
夏美も前のように元気になるんだろう。
きっとその二人は、ずっと一緒にいるんだろう。
俺はそう思うんだ。
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