一番の神は篠岡



『千代ちゃん…』

「名前ちゃん、どうしたの?珍しいね、授業と授業の合間に来るなんて…」

『急にごめんね』



名前ちゃんは何だか悩んでいるようだった。
取り合えず、話を聞こうと私は名前ちゃんを前の席に座らす。


『橋本さんって、知ってる?』

「橋本さん…?あぁ、校内一美人って噂の?」

『うん。あの子孝介が好きなんだって。』

「え…?」


どういうことだろう。橋本さんが泉君を好きで、名前ちゃんはそれについて悩んでいる。

もしかして、やっと泉君の気持ちが報われる!!?



『今日ね、孝介のこと好きじゃないなら一緒にいるのやめてって言われちゃって…。
私、いつもそばに孝介いたから、孝介のこと好きなんだけど恋愛感情で好きなのかどうかわからなくて…
よく考えたら、本当に申し訳ないことしてるんじゃないかって…

でもね、孝介から離れろって言われても、素直に離れられる自信がないの。
だってずっと一緒にいたんだよ?簡単には離れられないよ…っ

ねぇどうしたらいいかなぁ、私』



珍しく俯いた名前ちゃん。
泉君と幼馴染で、ずっと一緒にいたから感覚が鈍って恋愛感情の好きかどうかわからないんだね。

でも、離れたくないって事はそうとう泉君の事が好きなんだよ、名前ちゃん。



「名前ちゃんはどうしたい?」

『私…?』

「そう、名前ちゃんの気持ち。
離れられないんじゃなくて、きっと離れたくないんだよ。
だったら一緒にいたっていいんじゃないかなぁ?
好きかどうかより前に、きっと名前ちゃんの気持ちのほうがずっと大切だよ?

それに、いくら可愛くてスタイル良くて性格の良い女の子が泉君の前に現れても、きっと泉君スルーだもん。

何より泉君が名前ちゃんと離れたくないと思ってるよ?」


『孝介が?』

「うん。ゆっくりでいいんだよ。ゆっくり自分の気持ちを探して行けば良いんだよ。
泉君の事を名前ちゃんがどう思っているのか。
名前ちゃんの事を泉君がどう思っているのか。」


名前ちゃんは顔を上げた。
泉君、もう少しで名前ちゃんが気づくよ!!


名前ちゃんは、この教室に入ってきたときよりずっと明るい顔をして自教室に帰っていった。 

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