ありふれた淑女のお話。(マダム+リジ)

・シエリジ前提マダム+リジー
・色々捏造?含
・坊ちゃん出て来ません

ーーーーーーーーー


アン叔母さま、私叔母さまの教えを守れなかったわ。大人の世界なんて知らないみたいな顔をして只々笑っているのがお仕事って叔母さま言ってたけれど、あたしやっぱり強いから。守らなくてはいけなかったのよ。

向い側で叔母さまは少し声を上げながら微笑っていた。今日も真っ赤なドレスを着て、真っ赤なルージュを引いた彼女は見た目とは対象的にいつでも明るくて優しくて、大好きだった。

「シエルなら、そんなあんたでも良いってきっと言うわ。私の可愛い甥っ子ですもの、保証してあげる。」

「でも、こわいお嫁さんは嫌だって」

「淑女とは、殿方の隣で笑っているのが仕事。あんたはそのままで居れば良いのよ、って言ったじゃない。」

ほんの僅かに哀しそうに優しく微笑みながらあたしの頭を撫でると嬉しくて、安心を感じた。足元に視線を落とすと子供っぽいエメラルドグリーンのドレスがふわっと広がって、たっぷりのフリルが飾られている。無知を比喩するみたいな淡い色で包まれているといつだって不思議と幸せになれた。

「叔母さま……あたし、このままで良いの?」

だからこそ、あたしもこの幸せをシエルに分けてあげたかったのよ。だって、あの日帰って来たシエルからは笑顔が消えてしまったんだもの。けど、シエルの隣で微笑ってる事が、剣を振るう事で駄目になってしまうんじゃないかってあの日から考えて考えて、でもそんな事はシエルなら気にしないって解っている筈なのに不安で。

「そうよ、あんたはそのままでいなさい。」

「ふふ、叔母様ったら」

叔母様は笑いながらあたしの両頬を包むと軽く引っ張りながらも仄かに溜息を吐き出した。其れは春の風と紅茶の香りにに混じりながらも、叔母様の深紅の髪を揺らした。

「あんたがもう少し大きくなったら私の事も話さないとね」

「……アン叔母さま?」

「あんただけには話しておきたいの。……でもあともう少し、大人になってから話しましょう」

「ええ、叔母様さま!約束よ。」


ふわり、と風邪が吹くと目の前が霞んでゆく。ぼんやりとしか見え無いけれど叔母さまはすこし哀しそうに微笑っていて、手を伸ばそうとした時視界が遮断された。それと同時に視界に広がるのは部屋の、天井と仄かな朝の薫り。

「お早う御座います、お嬢様!本日も良いお天気ですね。」

「ポーラ……?」

「本日のアーリー・モーニングティーはお嬢様がお好きなダージリンと、ハーブのスコーンですよ。それに、本日はシエル様の所へ行かれるってお嬢様張り切ってらしたじゃ……お嬢様?」

「……ううん、何でもない。」


懐かしい人の夢を見たらしかった。それはまるで夢じゃないみたいな夢で、叔母さまがいつか話すと言っていた話は一体何だったのかしら。シエルなら知っているんじゃないかと一瞬思ったけれどあたしは、また懐かしい人の顔を見たいからやめておく。叔母さまはきっとあたしに話しに来てくれるわ。そう、遠くない未来に。


とある淑女のお話。

(貴方への秘密がまた一つ出来てしまったわ。)






novel top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -