・いつものごとく色々と捏造。 ―――――――――― 折原臨也の元で働く様になり、俺と沙樹は新宿のアパートに身を置いていた。 結局今も昔もあの男の手の内に居るしか無い事が情けない。 仕事から帰るとリビングのソファには沙樹が眠っていた。穏やかに寝息を立てれば肩が微かに揺れる。 「‥‥ふ、」 沙樹の短い髪に指を通せば触れた箇所が何となく擽ったくて俺は堪らず、少しだけ笑ってしまった。 「お帰りなさい、正臣。」 すると彼女は途端に目を瞑ったまま静かに俺へと言葉を発すると、ほんの僅に悪戯じみた子供の様な笑みを口元だけに浮かべる。――こいつ、最初から気付いてたな。 「ったく…ただいま」 くしゃりと髪を撫でてやり手を離すとソファの手前に腰を下ろし、ソファの側面に凭れ掛かる。 すると突如ふわりと包み込む穏やかな体温に一瞬肩を震わせるも、それが沙樹が背後から抱き着いた事から起きていると理解すればゆっくりと瞼を落とした。 「正臣はやっぱり可愛いね。」 「いやいやーかっこいいの間違いだろ?」 「かっこいいけど可愛いの、正臣は。」 「沙樹には負けるけどな。」 多分今沙樹は柔らかく微笑んでいるだろうが、目元にはきっと表情が着かないままだ。それは今も昔も変わらず、沙樹の不安定さは言うならば沙樹の個性でもあると俺は思うけど、出来たらいつか思いきり笑える様にしてやりたい、だなんて俺のエゴなのだろうか。 だけど結局いつも俺が支えられてしまっているというのは、つまり沙樹の言う“可愛い”に繋がるんだろうな。多分。 「ねぇ、正臣。私ならもう大丈夫だよ。」 「解ってるよ。」 「何で私に触れようとしないの?」 「…ん?俺だって沙樹が好きだから。その…大切にしたい訳よ。」 「……うん。」 「だから、沙樹に触れたくない訳じゃない。…寧ろ逆。」 「でも、」 「沙樹は綺麗だよ。」 そう言うと沙樹は黙ったまま、手に力を込めて少しだけ肩を震わせた。 自分が汚れていると多分沙樹は言おうとした筈だ。 「正臣は、ズルいよ。」 彼女の瞳からはいつの間にか涙が溢れていたのか其を背中に感じながら、沙樹の掌に手を重ねてみた。 2011/04/29 00:11 |