ジャンクフード。(要日)
  


・大学生位捏造設定
・要君一人暮らし
・朝チュンから始まります

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カーテンの隙間から覗く太陽の眩しさで目が覚めた。寝ぼけ眼には少々それは攻撃的であり思わず目を細める事五秒、欠伸を噛み殺し乍ら上半身を起こすと未だベッドの中で穏やかな寝息をたてる彼が居た。恐る恐る、と伸ばした指先を彼の漆黒の髪に絡ませればそれはするりと指の間を通り抜け、はらはらとシーツの上へと落ちる。痛みの無い綺麗な漆黒を保った髪の毛は自分と酷似していた。

無防備に寝息をたてる彼に触れるとそれは鼓動を早まらせるばかりで、熱を孕む指先を払うとそれを無視してぺしん、と彼の無防備な額を小突いて顔を覗き込む。「さっさと起きろ、馬鹿」なんて小言を一つ、二つ零した後要約その漆黒の髪の持ち主が眩しげに目を開きつつ少し掠れた声が鼓膜を擽る。そんな何気ない朝が心地良い。

「もう少し優しく起こせねぇの、お前」

「う、うるさいな!要がいつまでもぐーたら寝てるからでしょ。今日大学は?」

「休み。」

「…へぇ。」

「…何。」

「要、私牛丼食べたいなぁ。」

身体に纏ったシーツから抜け出すと纏うのは淡白な色のキャミソールとショートパンツのみ。白い肌に黒髪のコントラストに食い入る視線を送る少年の寝ぼけ眼な瞳には気付かずカーテンを勢いよく開けた。眩しいほどの光が部屋を包み込むと少年は再び瞳を閉じながら溜息を漏らす。ほんのり赤らむ頬を隠す様に顔を背けるものの赤みを帯びた耳たぶを隠す事を少年は忘れて居た。

「あっそ。勝手に行けよ。」

朝っぱらから重いものを食べるエネルギーを持ち合わせている訳もなく、前日の飲み会の名残が残る彼にとて少しばかり億劫である。その減る事を知らないエネルギーが何処から沸いて出るのか、呆れを孕む表情を滲ませたまま大袈裟な溜息を一つ。せめてうどんとかそばとか言えねぇの、なんて言葉を飲み込み乍ら。


「女一人じゃ入りにくいんだってば。要位しか頼める相手居ないんだから仕方ないじゃん。」

「……おー。」

「な、何それ…!」

「ったく、朝っぱらから牛丼かよ。…
仕方ねぇな。」

小さく溜息を零しながら紡がれた不器用な言葉にキョトンとしたまま首を傾げる自分を他所にもぞもぞと上半身を起こしながら少年は欠伸を一つ。Tシャツを脱ぎ乍らハンガーに掛かったシャツを趣に手に取ると少年がぽつりと言葉を零した。その表情が僅かに柔和である事を知らず、驚きを示しつつベッドに腰を下ろすと柔らかなマットレスが心地よくら弾む。

「お前、本当男っ気ねぇなぁ。」

「…なっ、煩い!」

「はいはい、嘘だっつの。そのー…何。彼氏、なんだから良いんじゃねーの。」

「……う、うん。」

現在背中合わせに座る彼らは互いの表情こそ見えて居ないものの声に乗せてその表情は滲んでいたが、双方それに気付いているかはまた別の話である。衣擦れの音が静かに只鼓膜を擽るだけの短い沈黙の間がやけに長く感じる。彼のたまに零す不器用乍らストレートな言葉が嬉しくて、自然と表情筋は緩み出すのだけれど素直に返せない自分も憎く、そんな感情が混沌とする中彼の背中に凭れ掛かり乍ら膝に顔を埋めて自分の表情を隠す。いつもこういう時ばかり私の悪い癖は出るのだ。

「……要ー。」

「何。」

「……好、…き。」

「……なっ…え、お前熱でもあんの?」

「……〜っ馬鹿!」


自分としてもこれでも毎度勇気を振り絞って捻出する言葉であるが故、少年のリアクションは更に羞恥心を高めるばかりで火照りが一向に冷めない顔を少年の方へと勢いよく向けた瞬間唇に柔らかい感触が。え、ちょっと何これ。突然の自体に混乱を抱え乍らも目を見開いているも、すっかり目を閉じるタイミングを無くしていた事に気付いてかぎゅっ、と瞳を閉じて五感に委ねる。瞳を閉じる事により視覚以外の五感が鋭くなる、と以前聞いた事はあるが確かに時計の針の音とか唇を重ねる音とか、自分の鼓動の音とか全て煩く感じるのは気のせいでは無いと思う。


「……っちょ、っと。要…っ」

「…どっちが馬鹿だっつーの。」

「え?」

「……こっちの話。つーかそれより準備出来たんならさっさと行くぞ、ホラ。」

「…?うん。私朝食セットにしよっかな。」

「もうメニュー決めんのかよ。」

「だってお腹空いたんだもん。」

「本当お前、色気より食い気だな。」




(食い気と色気は紙一重。)









2012/09/24 22:54

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